一昨日が夏至だったそうで、七時過ぎても空はまだ明るい。西の雲が一面に赤く染まって、東には満月と見紛うほど見事な十四夜の月がぽっかり浮かぶ。なんとも美しいも爽やかな眺めである。
八百屋の店先で珍しい野菜を見かけた。菠薐草や小松菜のように束ねて売られているが、緑葉の裏が紫色をしている。一束百円だというので買ってみた。名札が出ていないので店主に尋ねたら「ああそれは
キントキソウだよ」との答え。「
金時草」と書くのだという。
早速ものは試しと茹でて食してみると、独特のぬめりがある食感だが、癖のない味でなかなか美味しい。醤油にもマヨネーズにもよく合い、家人が海蘊と和えてみたら、これも旨いのだそうな。
ちょっと調べてみたら、確かに「金時草」と書くには書くが、読みは「キントキソウ」でなく「
キンジソウ」が正しいのだそうな。元来は紫色に因んで「
錦紫草」と称していたのだが、近年になって「金時草」と書くようになったという。成程これでは八百屋の主人が「キントキソウ」と誤読したのも無理はなかろう。
加賀野菜、すなわち石川県の名産らしいが、沖縄でも「ハンダマ」として親しまれており、正式な和名は「
水前寺菜」と称する。江戸時代にオランダ人が将来した外来種なのだという。平賀源内の書物にも言及されているらしい。知らなかったなあ。