更に勢いづいて手許にある
ジョーベールのディスクをたて続けに聴く。
"Maurice Jaubert: L'Atalante et autres musiques de films"
モーリス・ジョーベール:
映画音楽『新学期 操行ゼロ』(1933)*
映画音楽『巴里祭』(1933)**
映画音楽『霧の波止場』(1938)**
映画音楽『イースター島』(1935)***
映画音楽『アタラント号』(1934)***
1985年、映画『破壊された時』サウンドトラック*
1956年、セルジュ・ボド指揮、朗読/リュシアン・アデス**
1975年、『アデルの恋の物語』サウンドトラック、パトリス・メストラル指揮***Milan CD CH 274 (1990)
既存の音源の寄せ集めながら、ジョーベールの映画音楽の魅力に触れることのできる重宝な一枚。若き日のセルジュ・ボドが指揮した知る人ぞ知る稀少なLP「映画音楽の二十五年」(Véga 原盤)をごく一部ではあるが聴けるのも嬉しい。
"Musiques de films de Marcel Carné"
モーリス・ジョーベール:
映画音楽『霧の波止場』(1938)
映画音楽『日は昇る』(1939)
ジョゼフ・コスマ:
映画音楽『夜の門』(1946)
映画音楽『天井桟敷の人々』(1945)
ミシェル・プラッソン指揮
トゥールーズ・カピトール管弦楽団1992年7月2~5日、トゥールーズ、アル=オー=グラン
EMI France CDC 7 54764 2 (1993)
フランスを代表する指揮者と管弦楽団による映画音楽集は他に殆ど例をみない。流石に演奏は極めて質が高く品格に満ちている。繊細にして流麗なジョーベールのオーケストレーションの妙に初めて触れる思いがする。思えば戦前はオネゲルやミヨーが競って映画音楽を手掛け、デゾルミエールが数多くの映画音楽のタクトを執り、『天井桟敷の人々』はシャルル・ミュンシュ、『アルルの女』(マルク・アレグレ監督)はポール・パレーがそれぞれサウンドトラックを担当していた。演奏会場と映画スタジオの距離は思いのほか近かったのだ。
"Georges Delerue dirige la musique de film de Maurice Jaubert"
モーリス・ジョーベール:
映画音楽『日は昇る』(1939)
映画音楽『アタラント号』(1934)
映画音楽『赤頭巾ちゃん』(1929)
灰色の円舞曲 ~映画『舞踏会の手帖』(1937)
映画音楽『霧の波止場』(1938)
ジョルジュ・ドルリュー指揮
マドリード交響楽団1986年、セビーリャ(実況)
Disques cinémusique DCM 110 (2003)
トリュフォー監督がジョーベールに入れあげた挙句すっかり疎遠になった数年間を、相棒ジョルジュ・ドルリューはどういう気持ちで過ごしたのだろう。「どうして死者ばかり思慕するんだ?」「俺の音楽ぢゃ駄目だというのか?」などと腹立たしくなかったろうか。それはともかく、そのトリュフォーが卒然と世を去って早二年、あとに残されたドルリューはジョーベールの映画音楽のみで構成されたコンサートを何故かスペインで催した。その心中や如何に?
プラッソン&トゥールーズの綿密な演奏を聴いたすぐあとなのでマドリードのオーケストラはいかにも田舎くさく技量的にも劣る。ライヴなのでほうぼう綻びも目につく。それでも聴き通せるのはドルリューの先人への熱い敬愛の念の故だろう。
"Maurice Jaubert: Suite française, Intermèdes
et autres oeuvres orchestrales"
モーリス・ジョーベール:
フランス組曲
間奏曲集
映画音楽『赤頭巾ちゃん』
灰色の円舞曲* ~映画『舞踏会の手帖』
舞踊組曲* ~映画『巴里祭』
インヴェンション(三曲)*
ジャック=フランシス・マンゾーヌ指揮
ニース室内管弦楽団
ピアノ/ヨウコ・サワイ*1989年、ニース
2009年、モントリオール、スタジオ451*
Disques cinémusique DCM-CL206 (2009)
これは実に意義深いアルバムだ。初めてジョーベールの映画音楽以外の作品を標題に掲げたディスクが登場した。実は前世紀末に別の形で出ていたらしいが寡聞にして知らずにいた。小管弦楽のための「
フランス組曲」と弦楽合奏の「
間奏曲集」とをメインにする。もっともトリュフォー監督が前者を『
アデルの恋の物語』に、後者を『
恋愛日記』に、映画音楽として援用したから、誰しも映像への連想抜きに聴くのは困難かもしれない。事実、CDカヴァーはこんなふう(
→これ)。お、お美しい!
嬉しいことに本CDには新録音のピアノ曲が数曲特典として加わり錦上花を添えた、と云いたいところだが、この不自然な音色は… これでは音楽が台無しぢゃないか!