昨日からの雨は終日ずっと間断なく降り続き夜になって漸く止んだ。
ここ一週間ほどのデスクワークをまとめて保存。編集者に送ろうとしたらデータが重すぎて送れず、仕方ないので明日ディスクを持参することにした。
その間いろいろ耳にしたCDのなかで出色の一枚はこれ。
"Christian Ferras / Pierre Barbizet"
ブラームス: ソナタ 第三番*
バルトーク: ソナタ 第二番*
デルヴァンクール: 「ダンスリー」より ロンド、ブーレ、バスケーズ**
パガニーニ: 協奏曲 ニ長調(ピアノ伴奏版)**
ヴァイオリン/クリスティアン・フェラス
ピアノ/ピエール・バルビゼ
1960年9月18日、ロワイヨーモン修道院(実況)*
1954年3月5日、パリ、サル・ガヴォー(実況)**
INA mémoire vive IMV 052 (2003)
古いファンには
フェラス=バルビゼの名は懐かしい。フランスきっての俊英デュオとして1950~60年代に一世を風靡した。少なからぬ録音も残されている。
その後フェラスはカラヤン「お抱えの」独奏者としてベルリン・フィルとしばしば共演するなど世界的名声を手にし、一方のバルビゼがマルセーユ音楽院長の公務に追われたこともあってコンビは70年代初め自然消滅した。その後フェラスはアルコールに走って心身を蝕まれ、演奏生活から遠ざかるような破目になり、1982年9月14日に自ら命を絶った。栄光と失意が交錯する悲劇的な生涯だった。
天才肌のヴァイオリニストと生真面目なピアニストの組み合わせを青柳いづみこさんが漫才の「
やすきよ」コンビに擬えたことがあって(『ピアニストが見たピアニスト』白水社)、その一節を車中で読んでいて思わず噴き出しそうになった。そう、バルビゼは青柳さんの恩師でもあるのだ。
本ディスクはそのフランスの「やすきよ」の最も脂の乗った全盛期のリサイタルの記録として甚だ貴重である。
バルトークは正規録音がなくこれが唯一の演奏だし、忘れられた巨匠
デルヴァンクールの瀟洒な珍曲が聴けるのも嬉しい。