京都に「
カフェ・エルガー」というお店がある。純英国風を標榜する日本では珍しいカフェで、手作りスコーンと紅茶が美味しい。店主が作曲家エドワード・エルガー卿の熱烈なファンであるところからこの店名になった由。京都市役所の近くに威風堂々たる店構えを誇っていると聞く。
小生も2004年4月24日、たまたま入京した折にお訪ねしたことがある。ただし、その店は現在地に転居する前の初代のささやかなお店で、場所も壬生寺の近くだったと記憶する。朝日を浴びながらそうっと扉を開けると、紅茶の芳しい香りが店いっぱいに漂っていて、思わずここが京の都であることを忘れそうになった。
初めてお目にかかる温厚そうな店主に自己紹介し、しばしエルガー談義。名刺代わりに持参していったエルガーの歌曲集「
海の絵」のCDをかけていただく(
→これ)。カナダのコントラルト、
モーリン・フォレスターの深々とした歌唱にしばしふたりして聴き惚れた。
とても居心地のよい空間だったので思わず長居しそうになったが、そのあと大阪行が控えていたので一時間半ほどでお暇した。
玄関先まで見送ってくれた店主が扉の外で微笑んで、ふと鉢植えの薔薇を指さす。
ほら、この白い花、これがジャクリーヌ・デュ・プレという名の薔薇なんですよ。それから隣の鉢のピンクのほう、こちらはサー・エドワード・エルガーという品種です。
周知のとおり、改良された薔薇の新品種はしばしば各界の著名人に因んで命名される。この楚々とした白薔薇にはたしかに儚くも早世した薄倖の天才チェリストに似つかわしい風情がある(
→こんな花)。
昨日の店主のミクシィ日記によれば今年もジャクリーヌ・デュ・プレが可憐な花を咲かせたらしい。英国は無理だとしてもせめて京都には行きたいなあ。