Home, poor heart, you cannot rediscover
If the dream alone does not suffice.
Some Poems of Friedrich Hölderlin, translated by F. Prokosch, 1943
川村記念美術館のコーネル展示で彼が
ヘルダーリンの詩篇に触発されて作ったという可憐なコラージュ 《
あわれな胸よ、ふるさとを… Home, poor heart ... 》 を久しぶりに矯めつ眇めつ眺めた。
その印象が薄れぬうちにこんなCDを聴いてみる。先日六百円で入手したものだ。
"Brahms・Strauss・Reger・Rihm:
Music inspired by the poet Friedrich Hölderlin"
ブラームス: 運命の歌
リヒャルト・シュトラウス: 三つの讃歌*
レーガー: 希望に寄す*
ヴォルフガング・リーム: ヘルダーリン断章**
クラウディオ・アッバード:
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ライプツィヒ中部ドイツ合唱団
ソプラノ/カリータ・マッティラ*
バリトン/ヨハンネス・M・ケスタース**
1993年2月26~28日、ベルリン、フィルハーモニー楽堂(実況)
Sony SK 53 975 (1994)
ヘルダーリンの詩篇に基づく声楽入り管弦楽曲を集めた渋いアルバム。
ベルリン・フィル常任に就いたアッバードが意気込んで定期演奏会にシーズン毎「テーマ」を導入したことは銘記されていい。「プロメテウス」「ヘルダーリン」「ファウスト」「シェイクスピア」など意欲的なツィクルスが毎年のように繰り広げられた。それがきちんとアルバムとして記録されたのだから、思えば1990年代はいい時代だった。
ブラームス「運命の歌」以外まるで未知の曲ばかりだが、憧れに満ちたシュトラウスも、深く沈潜するレーガーも、稲妻のように炸裂するリームも、それぞれに聴き応えのある音楽である。こういう啓蒙的なプログラムを断行し、成果をちゃんとディスクに刻み込んだアッバードのベルリン在任時代は幸せだったといえよう。まあアルバムの売れ行きは芳しくなかったろうが。