朝起きると
井上ひさしの訃報に接した。小生は家人や妹ほどにはその芝居に親炙していない。実際に接した舞台といえば、『
夢の裂け目』(2001年、新国立劇場)、『
もとの黙阿彌』(2005年、新橋演舞場)、『
紙屋町さくらホテル』(2007年、俳優座劇場、レヴューは
→ここ)、そして『
ロマンス』(2007年、世田谷パブリックシアター、レヴューは
→ここ →ここ →ここ)。これくらいだと思う。軽々しく追悼の辞なぞとても口にできそうにない。
そこで1964年当時ちょうど小学六年だった者として一言だけ。
この年に始まったTV人形劇『
ひょっこりひょうたん島』を貪るように観ることで、小生は初めて「登場人物がここぞという場面でおのれの感情を歌で表現する芝居」、すなわち「ミュージカル」なるものの途轍もない面白さを知った。この笑いと涙、機知と諷刺の音楽劇、人情とナンセンスとスラプスティックの絶妙なアマルガムを通して、人間の素晴らしさと愚かしさ、単純さと複雑さを思い知らされた。この出逢いはそれからの人生に少なからぬ(いやむしろ、決定的に深甚な)影響を及ぼしているに違いない。だから井上ひさし(と共作者の山元護久)は間違いなく我が恩師なのだ。
なのでこんな哀しい日にも、泣くのはいやだ、笑っちゃおう。