台風一過といいたいような翌朝を迎えた。朝方まで凄まじい強風が吹き荒れていて、風音で目が醒めたほどである。少し寝直して八時過ぎに起床。なんだか寝足りないような気分だ。
ヴェランダに出ると、花々はあちこちで薙ぎ倒され、植木鉢ごと覆されたものすらある。ちょっと吃驚するような春の嵐だった。
今日も昨日の執筆の続き。やっと伊藤道郎のイザドラ・ダンカン鑑賞記録を紹介し終わった。あとは斎藤佳三の感想を検討すれば次回分は終了だ。それにしても九十七年前のベルリンの一夜について、揃いも揃って四人もの日本人が書き遺しているのだから驚かされる。先人たちはなんと筆まめだったのだろう。
今日もバレエ・リュスに因んだCDをBGMに選んだ。
グラズノーフ:
バレエ音楽『四季』*
ドメニコ・スカルラッティ(ヴィンチェンツォ・トンマジーニ編):
バレエ音楽『上機嫌な貴婦人たち』
バッハ(ウォルトン編):
バレエ音楽『賢い乙女たち』
ロバート・アーヴィング指揮
コンサート・アーツ管弦楽団
1960年9月26~28日*、1961年4月4~6日、
ニューヨーク、マンハッタン・センター・ボールルーム
EMI 65911 (1996)
グラズノーフの「
四季」はいい。傑作だ。ペチパ振付、1901年初演のプレ「バレエ・リュス」バレエである。昨日のチェレプニンとは段違い、魅惑的な旋律の発明力も管弦楽のイメージ喚起力も遙かに上首尾である。他のあまたある「四季」と違い、冬から始まるのがロシアらしくていい。凍てついた冬から雪解けを経て春が到来する。そのあたりの描写が絶妙なのだ。アーヴィングの指揮はまあまあかな。同曲で比較するとボリス・ハイキンやアンセルメやデゾルミエールには遠く及ばないけれど。
「
上機嫌な貴婦人たち」は正真正銘、バレエ・リュスの委嘱作で1917年のローマ巡業で初演。この早い時期すでにドメニコ・スカルラッティに目をつけたディアギレフの慧眼ぶりに脱帽である。
「
賢い乙女たち」はロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で1940年に初演。フレデリック・アシュトン振付による「バッハ・バレエ」、「狩猟カンタータ」の「羊は安らかに草を食み」が出てきたりする。ウォルトンのオーケストレーションは手堅いものだ。一体全体どんなバレエだったのだろう。