旅の疲れがどっと出た。なので今日はゆっくり音楽を愉しむことにしよう。
滅多に聴くことのない西班牙音楽。マヌエル・デ・ファリャを聴いてみる。さしたる理由はないのだけれど。
ファリャ:
パントマイム『代官と粉屋の女房』
七つのスペイン民謡*
メゾソプラノ/テレサ・ベルガンサ
ヘスス・ロペス=コボス指揮
ローザンヌ室内管弦楽団
ピアノ/フアン・アントニオ・アルバレス=パレーホ*
1983年12月、ローザンヌ、エパランジュ公会堂、1986年10月、ゼオン聖堂
Claves CD 50-8405 (1987)
『代官と粉屋の女房』(1917)は知る人ぞ知る隠れた逸品だ。岩波文庫で読めるアラルコンの短篇『三角帽子』をそっくりパントマイム化した。そう云えばもうお判りだろう。バレエ・リュスが世界初演して人口に膾炙した傑作バレエ『三角帽子』の前身にあたる作品なのである。なので曲想は概ねおんなじ(特に前半は)。
小さな芝居小屋での上演用なので管弦楽編成はごく小規模。室内楽のように響く。だがファリャの光彩陸離たる才能はすでに明らか。マドリードでの初演に居合わせたディアギレフが即座にその拡大版を作曲者に依頼したのも納得であろう。
ほんの少々加わるメゾ独唱に歌姫ベルガンサが花を添える贅沢な企画。この演奏が世界初録音だった由。なにしろ『代官と粉屋の女房』は公刊されず、1981年になって漸く楽譜草稿が発見された珍品なのである。同じくベルガンサが唄うピアノ伴奏による「七つのスペイン民謡」も優れた出来映えだ。
"Manuel de Falla & ses amis jouent Manuel de Falla"
ファリャ:
バレエ『恋は魔術師』
ソプラノ/コンチータ・ベラスケス
エルネスト・アルフテル指揮 セビーリャ・ベティカ室内管弦楽団
1929年11月6、7、8、11日
七つのスペイン民謡
メゾソプラノ/コンチータ・スペルビア
ピアノ/フランク・マーシャル
1930年3月10日、バルセロナ
バレエ『三角帽子』第二組曲
エンリケ・フェルナンデス・アルボス指揮 マドリード交響楽団
1928年4月18日、マドリード王立劇場
クラヴサン協奏曲
クラヴサン・プレイエル/マヌエル・デ・ファリャ
フルート/マルセル・モイーズ、オーボエ/ジョルジュ・ボノー、クラリネット/エミール・ゴドー、ヴァイオリン/マルセル・ダリュー、チェロ/オーギュスト・クリュック
1930年6月2、7日、パリ、コロンビア・スタジオ
コルドバのソネット
ソプラノ/マリア・バリエントス
ピアノ/マヌエル・デ・ファリャ
1930年6月3日、パリ、コロンビア・スタジオ
『恋は魔術師』(抜粋)
ピアノ/リカルド・ビニェス
1929年11月13日、パリ
The Classical Collector 150 112 (1992)
標題どおりファリャ自身とその知己による稀少な音源を集めた重宝な一枚。
録音こそ古ぼけているが、作品が生まれた時代の「生きた」演奏が聴ける。自作自演によるクラヴサン協奏曲が値千金だし、三十代で早逝したスペルビアの「七つの民謡」、伝説の名手ビニェスの「恋は魔術師」が絶品である。