どのように感想を記せばいいのだろうか。さまざまな思いが交錯するばかりでうまく言葉にならない。
NHK・BS2
21:00~21:55
MASTER TAPE──荒井由実“ひこうき雲”の秘密を探る
番組内容/
荒井(現・松任谷)由実のデビューアルバム「ひこうき雲」。制作に1年以上かけられたこのアルバムのマスターテープが現存している。本人やプロデューサーの村井邦彦、細野晴臣らレコーディングに参加した人たちが、実際にマスターテープを聴き、当時の様子を語りあう。アルバム制作にかかわった多くの人たちに語ってもらうことにより、「ひこうき雲」完成の秘密を探る。
出演/松任谷由実、松任谷正隆、細野晴臣、林立夫、駒沢裕城、有賀恒夫、吉沢典夫
インタヴュー出演/村井邦彦、雪村いづみ、シー・ユー・チェン1973年11月にひっそりと世に出たアルバム『ひこうき雲』は、十九歳のユーミンにとって全く思いもよらぬ成り行きの所産だった。「作曲家を目指していた」はずだったのに、周囲から「自分の歌は自分で唄ったほうがいい」と強く勧められたのだ。機を見るに敏な村井邦彦はシンガー=ソングライター時代の到来を直覚し、この「歌の下手くそな少女」を「日本のキャロル・キング」として送り出すことを決断する。
製作に係わった者たちが往時を回想し、ユーミンが演奏の当事者であるキャラメル・ママの面々(鈴木茂は不在だが)、録音ブースにいたディレクターの有賀恒夫、エンジニアの吉沢典夫を交えて、三十七年前のマスターテープを再生しながら語り合う。
古いケースに収められたマスターテープを大事そうに抱えたユーミンが懐かしいスタジオを再訪するという趣向。本当は田町のアルファ「Studio-A」であるべきなのだが、すでに解体されてしまったので、番組収録には都内のどこか別のレコーディング・スタジオが用いられたとおぼしい。そこに上記の顔触れが集まってアルバム所収曲を一曲ずつオリジナル再生していくという趣向だ。
恭しく取り出されたマスター・テープは16チャンネル。はっぴいえんどの『ゆでめん』(1970)が4チャンネル、『風街ろまん』(1971)が8チャンネルだったことからすれば長足の進歩である。これをレコーディングした田町のStudio-Aは1973年当時、誰もが羨む「東洋一の」(←死語)最新設備を誇っていたのである。かてて加えて、当時の常識からすればマスター・テープが保存されていること自体が珍しいのかもしれない。当時のレコード会社では2チャンネルのステレオにミックス・ダウンしたら録音時のマスターを廃棄してしまうのが常だったからである。
「
返事はいらない」「
ひこうき雲」「
きっと言える」「
ベルベット・イースター」の順に聴いていく。アルバム収録順と異なるのは演出なのか、マスターがそうだからか。
スタジオの調整卓の前でしばし無言で聴き入る面々。三十七年前の自分自身に再会する気恥かしさと懐かしさ、そこから流れてくる音楽の瑞々しさ。さすがに誰もが感慨深げである。
マスター・テープなので各チャンネルを自在に採り出せるのがなによりの強みである。「
きっと言える」を聴きながら誰かがふと口にする。「ヴォーカルとガットギターだけで聴いてみようよ」
なるほどこれは素晴しい聴きものだ。さんざん耳に馴染んでいたはずの録音がまるきり違った角度から光を当てられて新鮮な相貌を現す。アルバムでは陰に潜んでいた細野さんのガットギターの爪弾きがこんなにも繊細だったとは!
(まだ書きかけ)