たまたま点けた衛星TVで古い映画が始まるところ。観るとはなしに観てしまう。
波止場 On the Waterfront
1954
コロンビア映画
監督/エリア・カザン
製作/サム・スピーゲル
脚本/バッド・シュールバーグ
撮影/ボリス・カウフマン
音楽/レナード・バーンスタイン
出演/
マーロン・ブランド 、エヴァ・マリー・セイント 、カール・マルデン、ロッド・スタイガー、リー・J・コップ ほか
遙か昔にスクリーンで観たはずなのだが、すっかり忘れている。
モノクローム映像が生々しく、波止場界隈の荒んだ空気を伝える。ほとんどのシーンがマンハッタン対岸のニュージャージー州ホーボーケンでロケされたのだという。しかも画面にはそこはかとない詩情が漂う。それもそのはずだ、この映画の撮影監督は
ボリス・カウフマン。『アタラント号』を浮かべたフランスの運河はそのままNYの港へと繋がっていたのかと思うと感慨深い。
悪徳組合(ヤクザですな)に牛耳られ、甘い汁を吸われたうえ仲間の命を次々に奪われた港湾労働者(沖仲士ですな)が遂に立ち上がるというストーリー。東映あたりが高倉健の主演、マキノ雅弘の演出で映画化してもおかしくない話である。ただし決着は「殴り込み」や「斬り込み」でなく、犯罪調査委員会(サツですな)での証言によって果たされるところは彼我の大きな違いである。
真実に基づく証言は密告ではない
などという台詞が出てくるあたりは、この映画の二年前に非米活動委員会で「良心に基づいて」仲間たちを密告したエリア・カザン監督の自己弁護とも正当化ともとれてなんだか意味深長。苦い後味が残る映画。
忘れないうちに。レナード・バーンスタインの音楽はなかなかの秀作である。