新年あけましておめでとう。
というわけで初風呂から上がってTVを点けると、サイモン・ラトルの指揮姿がちらと映り、次いで黒人女性が「サマータイム」を唄う姿が大映しになった。ベルリンからの大晦日演奏会の実況生中継である。2009年最初に聴く音楽がガーシュウィンとは幸先が良い、こいつァ春から縁起がいいゾ。
続いて、同じく『ポーギーとベス』からデュエット「ベス、お前はおいらのもの」。
ラトルがこの歌劇を得意にしているのは夙に承知していたものの、こよなく美しいこの二重唱をベルリン・フィルの豊饒な弦楽群が伴奏するのを耳にすると、なんだか現実ではないような心持ちで眩暈がする。ベスはポーリーン・マラファーネという人、ポーギーを朗々と唄ったのはトーマス・クヴァストホフ。
もっともつらつら顧みると、ヨーロッパにおける『ポーギーとベス』の上演史は思いのほか遠い過去にまで遡れる。
第二次大戦下、ナチス・ドイツの占領を免れたデンマーク、スイスなどの歌劇場が、米国への親近感の表明を意図して、果敢にもこのオペラをレパートリーにしたと伝えられる。デビュー間もないリーザ・デッラ・カーサが顔を黒塗りにした舞台写真を見た憶えがあるので、チューリヒ歌劇場でこれが上演されたのは間違いない。戦中か戦後間もなくのことだ。
ベルリン・フィルがピットに入って、オール・ブラック・キャストの『ポーギーとベス』がラトルの指揮でザルツブルクで演じられる日も、遠からずやってくるのではないか。