(承前)
あのあと寝床にCDを持ち込んでイヤホンでヒコックスを偲んだ。
エドワード・エルガー:
歌曲集「海の絵」
「音楽を創る人々 The Music Makers」*
コントラルト/フェリシティ・パーマー
リチャード・ヒコックス指揮
ロンドン交響合唱団*
ロンドン交響楽団
1986年5月11、12日、ウォットフォード・タウン・ホール
EMI CDM 5 65126 2 (1995)
あまたある「海の絵」のディスクのうちでもこれは出色の演奏。おおらかさが良い。とはいえ1999年にフォン・オッター独唱で聴いた生演奏とはなんという違いであろう。あれはやはりオッターとヒコックスの一期一会の「海景色」だったのだなあと悟る。
滅多に耳にする機会のないオラトリオ仕立ての大曲「ミュージック・メイカーズ」は、こうして聴くと切々と胸に迫る名曲ではないか。いきなり自作、それも「エニグマ」の主題が奏でられ、しばらくすると「海の絵」もヴァイオリン協奏曲も第一交響曲も出てきて、これは作曲者のそれまでの音楽人生の回顧もしくは総決算という意味合いの音楽なのだろうか。終盤の一節の歌詞はまるでヒコックスのためにあるかのよう。
You shall teach us your song's new numbers,
And things that we dreamed not before:
Yea, in spite of a dreamer who slumbers,
And a singer who sings no more.
昨晩はなかなか寝付けなかった。