だいぶ元気が回復してきたので、印鑑とパスポートを持参して隣町の郵便局本局まで書留小包を取りに行く。
モスクワの古本屋から届いた荷物だ。ずっしり重たいその中身は一冊の画集。
М. Я. Чапкина
Московские художники детской книги. 1900-1992
Москва: Контакт-Культура
2008
「モスクワの絵本画家たち」とでも訳すのだろうか。20世紀にモスクワを拠点に活躍した子供の本の画家129名をアズブーカ(アルファベット)順に配列し、代表的な挿絵をカラーで紹介した256ページの贅沢な本。値段も安くはない。
「モスクワの」と銘打ったところがミソで、だからビリービンもレーベジェフもコナシェーヴィチも登場しない。ひたすらモスクワ派の作家たちの名前が続く。目ぼしいところを拾っておこう。
レフ・ブルニー 1894-1948
アレクサンドル・デイネカ 1899-1969
オリガ・デイネコ 1897-1970
イワン・エフィーモフ 1878-1959
ゲオルギー・エチェイストフ 1897-1946
ヴェーラ・イワーノワ 1896-1948
ニーナ・カーシナ 1903-1985
アレクセイ・ラプチェフ 1905-1965
ピョートル・ミトゥーリチ 1887-1956
マイ・ミトゥーリチ 1925-2008
アレクサンドル・モギレフスキー 1885-1980
アリサ・ポレート 1902-1984
エヴゲーニー・ラチョフ 1906-1997
ピョートル・ストラノソフ 1893-1942
ナターリヤ・ウシャコーワ 1899-1990
ヴラジーミル・ファヴォルスキー 1886-1964
チチャーゴワ姉妹 ガリーナ 1886-1967/オリガ 1891-1958
作品のセレクションが恣意的で、紙色を白くとばすなど、感心しない複製図版ではあるが、これだけの絵本作家の作品がオール・カラー、略伝入りで紹介されるのだから、この画集はリファレンスとして裨益するところ大。モスクワに特化したところが面白い。クネーベリ、ラードゥガ、ミリマノフなどの民間出版社を解説したページも有益だ(ただしロシア語だが)。
最大の収穫は、「幻のロシア絵本」展で取り上げ、復刻版まで出しながら、その生涯が皆目わからなかったリジヤ・ポポーワの生没年/場所が判明したこと。
Попова, Лидия Владимировна
Popova, Lidiya Vladimirovna
1903 ニコリスコエ=スヴェルチコヴォ
1951 モスクワ
絵本作品の刊行年代が1930年前後に集中しているので、てっきり夭折した画家かと思いきや、第二次大戦後まで存命だったとは意外だ。ともあれ、当時としても抜群のグラフィックなセンスをもった挿絵画家として、リジヤ・ポポーワの名はもっと広く知られてよい。