いやはや、世の中にこんなものが存在していたのか、と驚かされるのが古本収集の醍醐味である。「稀覯本」とは実はそう呼ばれることですでに「稀な存在」ではないのであり、むしろ存在することすら気づかれていないような、そんな知られざる書物こそ真に珍重されて然るべきだ。
折に触れて覗いている古書日月堂のHPに先週末、驚くべきアイテムが出現した。まさにそれは「存在すら気づかれていない」類いの一冊だった。少なくも小生は知らなかった。
それはこんな絵本である(
→ここ)。
『幻のロシア絵本 1920-30年代』の熱心な読者なら「あっ」と息を呑むことだろう。
知らなかったなあ、こんなものが存在するなんて驚きだ! 1932年にモスクワで刊行された写真絵本『これは何でしょう?』がデザイナー原弘の絶賛するところとなり、『光画』をはじめとするいくつかの雑誌で図版入りで採り上げられたことは夙に知られている。あまた将来されたロシア絵本のうちで、これは当時の尖端的なデザイナーたちの間で最も受けの良かった一冊だとは認識していたのだが…。まさかその「パクリ」というか「引き写し」というか、まるきりソックリ瓜二つの写真絵本がトウキョウで出版されていたというのだから吃驚するほかない。
上記HPで懇切な解説文をお書きになった日月堂店主・佐藤真砂女史は、この和製ロシア絵本の刊行が原弘か、あるいはひょっとして木村伊兵衛の仕業なのではないか、と推察されている。その勘は当たっているかもしれない。
ともあれ現物を見てみないことには始まらない。