十一月の最初の日は朝から雲ひとつない晴天。
それなのにどこにも外出せず、ひたすら部屋の片付けに勤しむ。あれやこれやで必要になった本や雑誌やCDや資料コピーやらがうんざりするほど散らかって、疾うに家人の我慢の限界を超えてしまった。
そこで日がな一日せっせと段ボールに箱詰めし、別棟の書庫まで運ぶ。これが結構な大仕事なのだ。ふう。
夕方になるのが早い。しかも、どんどん暮れてくる。秋の日は釣瓶落としとはよくぞ言ったものだ。
秋の日は つるべ落とし
小さくしぼむ 帰り道
指がかじかむ
大きくゆれる街に 投げキッス
月の光 見守るなか
心はぬくい
気まぐれな東風
やっと君と 話せそう
波ひとつ 立たぬ心に
あなたひとり 浮かばせて
漂いつづける
記憶で書いたので間違っていたら申し訳ない。小坂忠が唄ったバラードだ。曲名は「つるべ糸」だったと思う。作詞・作曲は鈴木晶子という人。のちの矢野顕子である。
残照が映える西空をふと見上げると、糸のように細い弓張月がうっすら。その少し上には宵の明星(金星ですね)が煌めく。それだけでも素晴らしいのだが、ほどなく水平線の彼方が柿色のグラデーションに染まり、まるで舞台のホリゾントのよう。これを当ブログでは「加藤泰の映画のような夕空」と呼び慣わしているのである。