小生にしては珍しく、原稿がすらすら捗った。例のプロコフィエフ財団の研究誌『三つのオレンジ Three Oranges』に寄稿が叶うまでを書いたのだが、自慢話めいた内容なので、あとで冷静に読み返し、もう少し手直ししたほうがよさそうだ。たやすく仕上がる原稿ほど、のちのち梃子摺ることになる。
そういうわけで、ちょっと小休止。新着CD鑑賞の続きと行こう。
アレクサンドル・モソロフ:
ピアノ・ソナタ 第二番 ロ短調 作品4 (1923-24)
二つの夜想曲 作品15 (1925/26)
ピアノ・ソナタ 第五番 ニ短調 作品12 (1925)
ピアノ/ヘルベルト・ヘンク
1995年3月録音
ECM 1569 (1996)
ロシア・アヴァンギャルド音楽の旗手(と称してもよかろう)アレクサンドル・モソロフ(1900-1973)、あの管弦楽曲「鉄工場」のモソロフの珍しいピアノ曲集。鬼面人を驚かす類の音楽ではないが、スクリャービンを20世紀的に錯綜させたような作風は傾聴に値する。第五ソナタ(最後のピアノ・ソナタという)のスケルツォ楽章が秀逸。
クルト・ワイル: ヴァイオリン協奏曲
ペテリス・ヴァスクス: ヴァイオリンと弦楽のための協奏曲「遠い光」
ヴァイオリン・指揮/アンソニー・マーウッド
アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
2004年12月7-9日、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
Hyperion CDA 67496 (2005)
ワイルとヴァスクスという意表を突いたカップリング。前者(1924)はシゲティに献呈され、後者(1996-97)はクレーメルのため作曲された、といえば二曲の隔たりの大きさがわかろうもの。クレーメルの録音は未聴なので、マーウッドの演奏を比較対照はできないが、ヴァスクスらしい息の長い旋律を嫋々と響かせる好演だと思う。ワイルの乾いた抒情との弾き分けも見事。