東京へ出たついでに新宿でいつものように中古CD渉猟。暑さにへばっていても、これだけは欠かせない。アディクティッドなのだ。
特段これといった掘出物はないのだが、いくつかに心惹かれた。
まずはこの三枚組。
"The Legend of Sviatoslav Richter vol. 1"
モーツァルト: ピアノ協奏曲 第二十七番*
シューマン: 序奏とアレグロ・アッパッショナート*
ラヴェル: 左手のためのピアノ協奏曲**
ブラームス: ピアノ協奏曲 第二番***
プロコフィエフ: ピアノ協奏曲 第五番****
ショパン: ピアノ協奏曲 第二番*****
バルトーク: ピアノ協奏曲 第二番******
ピアノ/スヴャトスラフ・リヒテル
ベンジャミン・ブリテン指揮 イギリス室内管弦楽団*
リッカルド・ムーティ指揮 ジェノヴァ市立歌劇場交響楽団**
マリオ・ロッシ指揮 RAIトリーノ交響楽団***
キリル・コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団****
エヴゲニー・スヴェトラーノフ指揮 ソヴィエト国立交響楽団*****
岩城宏之 指揮 フランス放送国立管弦楽団******
1965年6月16日、オールドバラ*
1969年6月14日、ジェノヴァ**
1962年10月19日、トリーノ***
1961年、モスクワ****
1966年12月20日、モスクワ*****
1967年4月2日、ロワイヤン****** (すべて実況)
Stradivarius STR 10024/26 (1989)
ブリテン指揮の最初の二演目のほかは初めて耳にする演奏ばかり。曲目のほとんどは正規録音があるのだが、ブラームスなどはEMIのマゼール共演盤を遙かに凌駕する出来。しかも明瞭なステレオ・ライヴだ。岩城宏之とのバルトークというのも珍しく、リヒテル、岩城ともに熱演だが、残念ながら録音が芳しくない。
"Viola Sonatas: Yuri Bashmet"
グリンカ: ヴィオラ・ソナタ
ロスラヴェツ: ヴィオラ・ソナタ
ショスタコーヴィチ: ヴィオラ・ソナタ
ヴィオラ/ユーリー・バシュメット
ピアノ/ミハイル・ムンチアン
1991年9月18-20日、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
RCA 09026 61273 2 (1992)
素晴らしく魅力的なロシア歴代のヴィオラ・ソナタ三曲。しかも奏者バシュメットの水も漏らさぬ完成度に舌を巻くばかり。とりわけロスラヴェツはこの不当に忘れられた天才の再評価の口火を切った意義深い演奏でもある。
ここでぐっと趣を変えて、20世紀初頭の英国「新音楽」の旗手を聴こうか。
シリル・スコット:
ピアノ協奏曲 第一番* (1913-14)
交響曲 第四番 (1951-52)
ある朝早く* (1930-31, rev. 1962)
ピアノ/ハワード・シェリー*
マーティン・ブラッビンズ指揮 BBCフィルハーモニック
2005年9月8, 9日、マンチェスター、新放送会館、スタジオ7
Chandos CHAN 10376 (2006)
第一次大戦勃発前夜、倫敦留学中の大田黒元雄青年が最も有望とみた英国作曲家のひとりがこの Cyril Scott だった。ここで聴くピアノ協奏曲はドビュッシーめいたムードを漂わせたこの時期のスコットの作風をよく伝える。その後の20世紀音楽の時流には乗ることができず、次第に傍流へと押しやられたスコットの楽曲は、第二次大戦後は永く等閑視され続けた。二曲目の第四交響曲は今の今まで演奏されたことが一度もないのだという! 最後の「ある朝早く」は民謡主題に基づく甘やかでラプソディックな変奏曲。こういうのもたまにはいい。