今夕(というか、もう昨夕)東京からの帰り、東京駅構内の書店に雑誌でも覗こうとふらりと入ったら、別掲の南條竹則さんの新著に思いがけず出くわした。五月に出ていたらしいのだが、ずっと不在だったので今日になって初めてその存在に気づく。
その前に立ち寄ったお茶の水の中古CD店でも予期せぬ収穫があった。
ラフマニノフ:
晩祷
ポール・ヒリアー指揮
エストニア・フィルハーモニー室内合唱団
2004年5月24~27日、ハープサル大聖堂
harmonia mundi France HMU 907384 (2005)
これが上質な演奏になろうことは、同じ顔触れが録音した一連の「バルティック・ヴォイス」シリーズや「ロシア聖歌集」から予測できたのだが、いざ耳にしてみると、想像を絶する至高の演奏なので、またしても言葉を失ってしまった。同曲のこれまでのディスクでは味わえなかった微細なニュアンス、玄妙の限りを尽くすハーモニー、心の襞に分け入るような表現の彫琢。ラフマニノフの最高傑作はまさしくこの曲なのだ、と確信させるに足る、比類なき歌唱なのだ。彼らはこの夏、ロンドンの「プロムス」に招かれ、ロイヤル・アルバート・ホールでこの「晩祷」を歌うのだという。ヒリアーは昨年限りでこの合唱団の常任指揮者の地位を辞しているので、その機会を逃がすともう二度と聴けないかもしれない。
トマス・アーン: 歌劇 『アルフレッド』 抜粋
ダイアナ・モンタギュー、ニコラス・シアーズ、マーク・パドモア ほか
ニコラス・クレーマー指揮
エイジ・オヴ・エンライトゥンメント管弦楽団
1995年10月16~17日、ロンドン、メイダ・ヴェイル・スタジオ1
BBC music BBC MM 58 (1997)
初めて聴くアーンの歌劇の抜粋。ヘンデルと同時代の音楽だが、まるで馴染はない。それもその筈、同曲の初CDなのだという。400円では申し訳無いほど質の高い演奏。「プロムス」の最終日に必ず歌われる「ルール・ブリタニア」は、実はこのオペラの大団円を飾る楽曲なのだ。勿論ここにも収録されている。
このあと、マックス・レーガーの女声歌曲集(cpo)を聴き、その奥深く複雑な味わいに打たれたのだが、これはもう一度、歌詞をきちんと追いながら聴き直そう。