ああ、しんどかった。ようやっと脱稿。出来はともかく書き終えた。ふう。
ほっと一息つきながら、ひとり湯を沸かし紅茶を淹れる。流れている音楽はジョージ・ガーシュウィンだ。それも飛びきりの一枚。一昨日、お茶の水の中古屋で見つけてきた。もう十五年以上探し続けて、ようやく手にした稀少なCDである。
ガーシュウィン:
前奏曲 第一番
前奏曲 第二番
前奏曲 第三番
ラプソディ・イン・ブルー
二つの鍵による即興曲
リアルト・リップルズ
ザ・マン・アイ・ラヴ*
スワニー*
フー・ケアーズ*
ス・ワンダフル*
オウ、レイディ・ビー・グッド*
アイ・ガット・リズム*
パリのアメリカ人
ノーバディ・バット・ユー*
アイル・ビルド・ア・ステアウェイ・トゥ・パラダイス*
ドゥー・イット・アゲイン*
ファッシネイティング・リズム*
サムバディ・ラヴズ・ミー*
スウィート・アンド・ロウ・ダウン*
クラップ・ヤ・ハンズ*
ドゥー・ドゥー・ドゥー*
マイ・ワン・アンド・オンリー*
ザット・サートン・フィーリング*
ライザ*
ストライク・アップ・ザ・バンド*
ピアノ/フランソワ=ジョエル・ティオリエ
1987年、パリ
ビクター VICC 68 (1991)
知る人ぞ知る、というか、今や誰ひとり知らないかもしれないが、とにかくこれは途方もない名演なのである。ガーシュウィンのピアノ独奏曲をここまで繊細瀟洒に、しかもこれほどに音楽的に仕上げた人をほかに知らない。
あまりにもフランス音楽ふうの解釈で、そう、これではまるでラヴェルのピアノ協奏曲そっくりだと評されるかもしれないが、もともとガーシュウィンの音楽にそうした特質が潜んでいるのだ、と言いたい。和音の響きがとにかく玄妙なのである。
*印を附した曲目は数あるヒット曲のなかからガーシュウィン自身が選りすぐって、実に巧妙極まるアレンジを施した小品集「十八のヒット・ソングズ」(1932刊)。この魅惑的な曲集をはじめて聴いたのは、アメリカの黒人ピアニスト、アンドレ・ウォッツの胸のすくような名演を通してだった。そういえば、その懐かしいアルバムはいみじくも "By George!" と題されていたっけ。