昨晩は珍しくなかなか眠りに就くことができず、そのせいで今朝はえらく寝坊。友人から届いたメールで高杉一郎さんの死を知らされ、途端に目が醒めた。
来週に締切が来る原稿執筆のため、地元の中央図書館で調べものをする必要に迫られる。家人を誘ってサイクリングがてら出掛け、途中で「巻葉亭」でロールキャベツと牛タンのランチ。そのあと、数冊の本を借りてアルブレヒト・デューラーについて俄か勉強。いつものこととはいえ、我ながら情けない体たらくだ。
帰宅して一服すると、すぐまた外出。今度は電車で東京へ。
今日もまたフィルムセンターでマキノ雅弘作品。極めつけの鍾愛の一本である。
殺陣師段平 1950
月形龍之介+山田五十鈴+市川右太衛門+杉狂児+月丘千秋
歌舞伎ふうの古臭い殺陣に固執し、新国劇の目指すリアリズム剣戟についてゆけず凋落する昔気質の殺陣師(たてし)段平。それを蔭で支える髪結の女房・お春。月形龍之介も山田五十鈴も、もうこれ以外にないというほどの嵌まり役。怖いほどの名演技だ。マキノの演出も尋常ならざる力が注がれていて、どのシーンからも片時も目が離せなくなる。なんとエモーショナルな映画だろう。
もう何度目かであり、結末も熟知しているのだが、それでも涙が滂沱と流れ出す。
この作品と、五年後の「リピート」である『人生とんぼ返り』のどちらがより傑作なのだろう。今日の印象ではやはりこちらの純朴なひたむきさに軍配を上げたい気分だが、あちらを観た日にはきっと別の意見を吐くことであろう。