今日は昔の職場である千葉県佐倉の川村記念美術館まで出向いた。
現在ここは増改築工事のさなかで長期休館中。いくつかの所用を済ませたあと、学芸員の林寿美さんのご好意で、ほとんど完成した増設部分を見学させていただく。
既存部分から渡り廊下を抜けると、不等辺七角形をした不思議な部屋に辿りつく。ここが新しい「ロスコ・ルーム」なのだという。マーク・ロスコ晩年の壁画七枚のための専用空間である。改築前の旧「ロスコ・ルーム」は見るからに手狭で天井も低く息苦しかったのだが、ここは広さも天井高も適切に設計されている由。絵が並んだ状態が今から待ち遠しい。その「ロスコ・ルーム」をあとにして階段を上がると、そこには明るく開放的な「ニューマン・ルーム」が設えられている。バーネット・ニューマンの巨大カンヴァスただ一点を飾るための贅沢な空間。これまた絵が設置されたところを早く見たいものだ。
このほか天井高六メートルの展覧会専用スペースも増築され、美術館の主要なコレクションをすべて展示したまま状態で、大がかりな展覧会を別室で同時開催することが可能になる。小生が在籍していた時代からずっと待ち望んでいた悲願がようやく叶うことになり、感慨も一入である。
すべての工事が終了し、リニューアル・オープンを迎えるのは来春の3月15日とのこと。その日が来るまで、あと少しの辛抱である。
結局あれやこれやで、今日は朝から夕方まで美術館にいた。暇乞いをして外に出たら、鬱蒼たる木立の向こうにオレンジ色の日没が鮮やかにみえた。
帰りは久しぶりに千葉駅で途中下車。山野楽器に立ち寄って、珍しくも新譜のCDを購入。ヴァルトラウト・マイアー Waltraud Meier というソプラノが歌うリヒャルト・シュトラウスの「四つの最後の歌」(Farao B 108033)、珍しくもピアノ伴奏による録音だ。
帰宅して、さあこれでも聴きながら日記を書こうとPCを立ち上げたら、6月9日の拙エントリー「アラベリッシマ」にErvinさんという未知の方からコメントが寄せられている。小生が5月から断続的に綴った「四つの最後の歌」とソプラノ歌手リーザ・デラ・カーサについての一連の記事をお読み下さったようだ。
しかもErvinさんはご自身のサイトで、そのリーザ・デラ・カーサについて、たいそう示唆に富む長文の論考を寄せておられる。1960年にザルツブルクで彼女の主演で撮られるはずだったオペラ映画『薔薇の騎士』が、土壇場で主役交代になった事件の顛末を辿った内容である(「踏みにじられた『ウィーンの名花』─デラ・カーザ降板劇」
→これは必読です)。
こういう秀逸なサイトを拝見するにつけ、おのれの不勉強を思い知らされる。小生の綴る文章なぞ取るに足らぬ雑文に過ぎないと悟って、いささか落ち込む。今夜はもう寝てしまおう。