先日たまたま御茶ノ水の中古レコード店で見つけた芸術歌曲としての子守唄ばかり集めたCDがえらく気に入って、繰り返しかけている。
世界各国(といっても英米が大半だが)のララバイやクレイドル・ソングやベルスーズを二十五曲たて続けに聴くわけだが、どの曲も平明で穏やか(まあ当然ですね)、一分からせいぜい三分ほどの小曲なので、苦にもならぬし退屈でもない。それにこのディスク、選曲がたいそう好もしいのだ。
01. コープランド: 子馬たち
02. アイヴズ: 子守唄
03. ブリテン: クッションが縫えるかい?
04. アイヴァー・ガーニー: 子守唄
05. ジャン・ユボー: 子守唄*
06. バーバー: 聖女イタの幻視
07. ディーリアス: 子守唄
08. シリル・スコット: 子守唄
09. モンポウ: 揺籠の歌*
10. ガーニー: 眠り
11. ヴォーン・ウィリアムズ: 子守唄
12. ハミルトン・ハーティ: 子守唄
13. セメン・バルモティン: 子守唄*
14. ウォーロック: お休み、可愛いニンフ
15. ウォーロック: 子守唄
16. ラヴェル: フォーレの名に拠る子守唄*
17. ディーリアス: モダンな赤ん坊への子守唄
18. バーバー: 聖母の子守唄
19. スタンフォード: 黄金の子守唄
20. ネッド・ローレム: 子守唄
21. フィンジ: ララバイ、おお、ララバイ!
22. シベリウス: 子守唄*
23. ウォーロック: 眠り
24. リャプーノフ: 子守唄*
25. エルガー: 海の子守唄
タイトルは、フィンジの曲名をそのまま採って『Lullaby, oh lullaby! ララバイ オー ララバイ』という。米人ソプラノ歌手マーシー・メス Marci Meth が友人のピアニスト木野真美と共演したアルバムである(ライヴノーツ WWCC 7553)。この六月に出たばかりの新作だという。今年の一月、東京の三鷹で収録された由。
子守唄ばかり集めるという趣向はこれまでに例がないわけではないが、すでに述べたように、本アルバムは選曲のセンスが断然光っている。有名無名を問わず、集められた歌がいずれも珠玉の名品揃いに思えてきて、どれを紹介したらよいか迷ってしまうほど。とにかく一聴をお奨めしたい。標題になったフィンジも、シリル・スコットも、ディーリアスの二曲も、ウォーロックの三曲も、つくづく美しい曲なのである。思わず溜息が出るほどに。
透明な声と玲瓏なピアノが素晴らしく調和して、夢見心地へといざなう。ところどころに嵌め込まれたピアノ独奏曲(* 印)も、こよなくいとおしく、絶妙な間奏曲の役割を果たしている。
ひとつだけこのアルバムの欠点を挙げつらうならば、あまりの心地よさについつい眠りに就いてしまい、最後の曲である鍾愛のエルガー「海の子守唄」までなかなか辿りつけないこと、かな。