この本を話題にするのをずっと躊躇していた。七月に刊行されてすぐ買い求め、読了もしていたのだが、小生に果たしてこれを云々する資格があるのか、どうにも自信がもてなかったのだ。
ロバート・アルトマン わが映画、わが人生
ロバート・アルトマン=述、デヴィッド・トンプソン=編、川口敦子=訳
キネマ旬報社、2007
昨年末アルトマンの訃報に接したときも、同じような感慨に襲われた。つまり、かつてあんなにも魅せられ、夢中になっていたのに、久しくその新作を楽しみにしてこなかったことに対し、ひどく後ろめたい罪悪感を抱いたのだ。
小生が映画鑑賞全般から遠のいてしまった90年代末からは言うに及ばず、1980年の『ポパイ』の時分から、もうずいぶん長いことアルトマン映画には齟齬と違和感──「こんなはずじゃないのに」という居心地の悪さしか感じなくなり、しまいには観ることすら怠るようになった。今さら悔やんでみても仕方ないが、恋人と残念な別れ方としたみたいな心残り、苦い後味が尾を引いている。エットレ・スコーラの映画の題名じゃないけれど、「あんなに愛し合った僕たちなのに」という按配なのだ。
この本の巻末のフィルモグラフィを追ってみて愕然とした。80年代以降に、想い出深いアルトマン作品が一本もないのである。
1980 H.E.A.L.T.H.
1980
ポパイ
1982 Come Back to the Five and Dime, Jimmy Dean, Jimmy Dean
1983
ストリーマーズ
1984 Secret Honor
1985
フール・フォア・ラブ
1987 突撃! O・Cとスティックス/お笑い黙示録
1987
ニューヨーカーの青い鳥
1987
アリア (オムニバス映画)
1990
ゴッホ
1992
ザ・プレイヤー
1993
ショート・カッツ
1994 プレタポルテ
1996 カンザス・シティ
1998 相続人
1999 クッキー・フォーチュン
2000 Dr.Tと女たち
2001 ゴスフォート・パーク
2003 バレエ・カンパニー
2006 今宵、フィッツジェラルド劇場で
観ているのは辛うじて赤文字の作品だけ。『プレタポルテ』以降は全くの未見。いやはや、これではアルトマンを追悼する資格が疑われようというものだ。
(まだ書きかけ)