忘れないうちに書いておこう。
豊田市美術館はやっぱり日本でいちばん美しい美術館だ。足を踏み入れた途端に、建物が醸す静かな緊張感がまず訪れた者の背筋をシャキッとさせるし、20世紀美術のコレクションは稀にみる水準の高さ。おまけに絶えず展示に工夫を凝らし、作品に新たな光を当てる努力を怠らない。
今回もコレクションを中心に構成された「宇宙御絵図(うちゅうみえず)」展が、ただもう訳もわからず、でも面白い、という破天荒な内容だったし、特別展「シュルレアリスムと美術」も、国内に所蔵される作品中心ながら、イメージの拡がりと奥行きを感じさせる良質な展覧会だった。前者は9月24日まで。後者は9月17日まで(ただしこちらは横浜にもいずれ巡回)。
ここを訪れるのは四年ぶり。いつ再訪して裏切られることのない、日本ではきわめて数少ない美術館がここにあると実感した。高水準を維持する陰には、おそらくスタッフの筆舌に尽くせぬ労苦があるのだろうが、そんなことは露ほども感じさせず、静かに淡々と誇り高く、それが当然であるかのように存在する豊田市美術館に、心からのオマージュを捧げたい。
それにしても、暑い真夏の昼下がり、ここのカフェで飲む珈琲のなんと心静まることよ。