そういうわけで日帰りで仙台へ出かけて先ほど帰宅。さすがに草臥れた。
宮城県美術館で「日本彫刻の近代」という大掛りな展覧会のオープニングがあった。朝九時からというので、頑張って四時起きで出かけたのである。八時半に到着するとなんと一番乗り。旧知の西村勇晴さんが出迎えてくれた。かつて現役時代に「ルノワール展」を一緒に準備したお仲間なので、懐かしさもひとしお。ここを訪れるのは五、六年ぶりだが、いつ来ても落ち着いた佇まいにホッとする。歴史と風格のある好もしい美術館なのだ。
展覧会そのものも見応え充分。担当の三上さんは昨夜は遅くまで展示の仕上げ作業があった由で、さすがに疲労と安堵の表情だったが、ずっと頑張ってこられた甲斐はあったと思う。小生はカタログの編集をお手伝いしただけだが、明治から昭和まで近代彫刻の優品がずらり並ぶさまはまことに圧巻。展示スペースにもう少しゆとりがあれば、と思わなくもないが、まあそれは望蜀の嘆の類いだろう。
そのあと、ここの常設展示も拝見。新収蔵品を含む松本竣介の小特集、カンディンスキーと神原泰の抽象画を並べたコーナーなど、興味津々の内容。いつ来てもここのコレクションは粒揃いだし、学芸員の見識と愛情が伝わる展示が心地よい。
昼食のあと、眺めのよい館内のカフェで西村さんと珈琲をご一緒しながら四方山話。ルノワール展の準備では苦楽を共にし、地球一周の旅までした間柄なので、久しぶりなのにすぐ打ち解けて話せるのが嬉しい。さっき観た常設展示を褒めたら、「当然でしょ」という表情でにっこり微笑んだ。
帰りしな、西村氏が寄稿した大原美術館での展覧会のカタログを恵贈される。児島虎次郎のベルリン滞在を跡づける興味深い内容だ。
そのあと、せっかくなので街へ戻って七夕で賑わう市中を散策。東京と変わらぬ蒸し暑さに閉口していたら驟雨になる。路地に駆け込むと、「イノダコーヒ」の看板に出くわす。京都のイノダの支店が仙台にあるとは知らなんだ。さっそく飛び込んで一息つく。美味しい珈琲を啜りながら先の西村論考を読む。いつもながら丹念な調査に基づく手堅い内容に感服。
雨がすっかり上がったので仙台駅まで歩く。夕方の新幹線まではまだ間がある。そこで土産に笹蒲鉾やズンダ餅を買い込み、地下のバーで美味しい牛タンをつまみにビールを呑んだ。