空のカケラを飛び越して
いつもの街角へ
五月の雨の忘れもの
小さな水たまり
… (南 正人「五月の雨」より)
というわけで月が改まった。
先月はどういうわけか当ブログの更新がえらく頻繁で、「小の月」であるにもかかわらず50エントリーを数えた。覗きに来て下さる方も少しずつ増加しているようだ。まあ、気の向くまま、肩肘張らずに続けていくつもりなので、よろしくお付き合い願いたい。
外出から帰って郵便受けを覗くと、不用不急のダイレクトメール類に混じって、小生あての郵便物がいくつか。電子メール全盛の時代にあって、わざわざ宛名を書いて投函される書状はかえって有難味が増したような気がする。
まずパリの児童書専門の古書店 Librairie Thierry Corcelle から美麗な最新カタログが。このティエリー・コルセル氏がいなかったら、「幻のロシア絵本」展は実現できなかったろう。それくらい小生は彼のお蔭を蒙っている。豊富なネットワークを生かして、稀少なロシア絵本をほうぼうから探し出してくれたのも、アンドレ・エレの遺族から買い取ったスケッチブックや手描きのダミー絵本を提供してくれたのもすべて彼である。
いわば小生の大恩人なのだが、このところ訪欧の機会もなくご無沙汰続き。今回のカタログではブレーズ・サンドラールの "Petits contes nègres pour les enfants des blancs" という絵本(1929)が飛びきり素敵なのだが、値段のほうも飛びきりなので貧乏書生には到底手が出ない。
続いては表参道の美術書専門店「ナディッフ NADiff」から閉店の予告通知。五月いっぱいで店を閉めるのだそうだ。テナントとして入っていたビルそのものが解体されるので、退かざるを得ないということらしい。
ここでは買うよりも見るだけのことが多かったが、それでも新着美術書に触れる楽しみをたっぷり味わわせてくれた有り難さは忘れられない。ネット経由で世界じゅうの本が瞬時に手に入るようになった今も、ヴィジュアル本ばかりは現物を手に取らないことには始まらない。転居先は未定とのことだが、今度の店でも美味しい珈琲を飲ませてほしい。
次の封筒は大阪の画廊「ギャラリーヤマグチ クンストバウ」の展覧会案内。学芸員時代に桑山忠明さんの展覧会を担当したとき、何から何までここのお世話になった。画廊主の山口孝さんはとにかく透徹した感性の持ち主で、純度の高いアーティストしか扱わない。その頑固一徹な姿勢にはいつも敬服しているのだが、最後にお会いしてからかれこれ五年になる。せっかくご案内いただいたので、次に関西に行く折にはぜひギャラリーをお訪ねしたいものだ。
最後は富士見台のレストラン「香菜軒」から。毎月いただいているお知らせの葉書だ。手書きの文字に心和む。この連休中、祝日は無休で営業するとのことなので、近々また足を運びたいものだ。なにしろ美味しい店なので。
外は相変わらずしとしと。五月の雨が降り止まない。