今日は青山で「来日ロシア人研究会」例会がある日だが、そちらはちょっと欠席して新宿区落合へ。新宿歴史博物館が主催する街歩きの会「歴史・文化探訪」に参加することにした。
一昨年、昨年と、この博物館で解説ヴォランティアを養成する際、講師としてささやかなお手伝いをした。すでに何人もの解説員がデビューし、同博物館附属の「林芙美子記念館」で活躍されているのだが、残念なことにその仕事ぶりを実見する機会がなかった。
同館では今年も新たな希望者を募って、小生はまたも養成講座の講師を依頼されたので、それに先だって街歩きの会に参加して、トークの様子を見学させてもらおうと考えた。林芙美子記念館の解説員の多くが今日の会でも説明役を務めると聞いたからだ。
12時30分、落合第三小学校に集合。75人の参加者を三グループに分け、いざ出発。好天に恵まれ、恰好のウォーキング日和でなによりだ。四時間かけて落合・中井界隈の歴史的スポットを巡って歩く。全長約七キロ、歩数にすると約一万歩になるという。
コースは以下のとおり。
落合第三小学校→自性院(通称・猫地蔵尊)→葛谷御霊神社→哲学堂公園→中井出世不動尊(東京唯一の円空仏)→目白大学(落合遺跡出土品)→中井御霊神社→林芙美子記念館→染の里二葉苑→月見岡八幡神社→泰雲寺跡→下落合駅
いや~面白かった。なにしろ旧石器時代から昭和期まで、この地に暮らした人々の営みが通観できる刺激的なツアーだったのである。この一帯は妙正寺川(神田川の上流)流域の肥沃な土地なので、大昔から集落が点在し、中世・近世には農民たちの素朴な信仰がさまざまに展開、大正期からは和服地の染色業が営まれ、鄙びた環境を愛でた林芙美子がここに終の棲家を定めたという次第。
そのすべてを貫くのは、川の流れ、水の恵みであることがおのずと了解され、「落合」という地名が意味深く思えた有益な一日だった。交替で説明役を担当した解説員たちも、初めて街歩きガイドを務めるとは思えぬほど弁舌さわやか、堂々たる話しっぷりなのに感心。
猫地蔵尊では、なんと節分の今日だけ開帳されるという秘仏「太田道灌の招き猫」「猫面地蔵尊」をしっかり拝み、家内安全の招き猫を買い求めた。
さすがに足がくたびれ、喉も乾いたので、下落合駅近くの「Cafe杏奴」でちょっと一服。珈琲が旨く居心地のよい店だ。
そのあと新宿でちょっとディスクユニオンを覗いたあと、七時前に西荻窪へ。
ネット書店「古本 海ねこ」店主の場生松さんと落ち合って、高円寺でのトークショーについてアイディアを練る。途中から「古書・音羽館」店主の広瀬さんも加わって三人でいろいろ案を出し合った。広瀬さんと小生が「古本屋とコレクター」の微妙なカンケイについて語り合う、という内容になりそうな気配。場生松さんはイヴェント全体を仕切るプロデュース役ということに。
いい気になって四方山話に耽っていたら、あっという間に夜が更けた。あわてて電車に飛び乗って、二時間かけて帰宅。いやはや足と口が草臥れた一日だった。ふう。