前々から楽しみにしていたコンサート「あるパトロンの肖像~パウル・ザッハー生誕100年記念」の第一日目。サントリーホール(小ホール)で七時から。
今日のプログラムは、前半にザッハーに献呈された作品、後半にザッハーが発注した作品をそれぞれ配した二部構成。
まず、ロストロポーヴィチの発案でザッハーの70歳の誕生日プレゼントとして書かれた無伴奏チェロ曲を三曲(ベリオ、ブリテン、デュティユー)。デュティユーの「三つのストロフ」は、ロストロ氏を想定しただけあって、高度なテクニックを要する巨匠的な難曲だが、これを暗譜で堂々と弾ききった丸山泰雄に大拍手。続くハインツ・ホリガーの弦楽四重奏曲(1973)もいかにも難しそうな曲。小刻みなフラジョレットがキリキリと耳を苛み、いささかも気の抜けない緊迫感が三十分以上も持続する。最後は四人の奏者の吐くかすかな息の音だけが聞こえて終了。これを捧げられて、はたしてザッハー翁はどう感じたのだろうか。
休憩を挟んで後半は、シャーンドル・ヴェレシュの「弦楽のための四つのトランシルヴァニア舞曲」(1943/49)とストラヴィンスキーの「弦楽のための協奏曲(バーゼル協奏曲)」(1946)。どちらもザッハーの委嘱作で、彼とその手兵のオーケストラが初演したものだ。前者はかなり珍しい曲で、小生は初めて聴く。
臨時編成のアンサンブルだそうだが、日本の若い弦楽奏者たちはきわめて優秀。終始破綻なく、聴き応えある響きを維持していた。とはいうものの、指揮者(佐藤紀雄)の解釈には大いに問題アリ。リズムがやたら重く、表情も大仰なため、ヴェレシュでは野暮ったさが増幅し、ストラヴィンスキーでは玄妙さが消し飛ぶ残念な結果となった。ザッハーだったら、もっと淡々と、格調高く仕上げたはずだ。