少し体力が回復してきたので上京、まず懇意にしている古書店で、新入荷した戦前のロシア絵本の一山を拝見。
プロレタリア童画家だった松山文雄(1902~1982)の旧蔵品だといい、いかにもそれらしい地味なラインナップだが、来歴がはっきりしている点できわめて重要だし、その妻でやはり童画家だった前島とも(1904~1986)の旧蔵絵本とおぼしき二点も含まれていた。彼女はこれら二冊の絵本を範として絵雑誌『コドモノクニ』の挿絵を描いている。1930代初頭のロシア絵本がプロレタリア系の童画家たちの手に届いていたことを実証する、貴重極まりない遺品だと思う。即座に購入を決めたが、支払いはいつになることか。
そのあと、店主とともに地下鉄で移動、国会議事堂周辺で行われている「11・3 国会包囲大行動」に参加した。
いや、参加したというのは大袈裟かもしれない。われわれ二人は半ば好奇心から国会議事堂の周囲をぐるり一周し、四か所で開催中の集会の様子を見て歩いたにすぎない。参加者というよりも見学者、傍観者、むしろ野次馬に近い存在か。とはいえ、手渡された二枚のスローガンをずっと掲げて歩いたので、やはり参加者の端くれに数えられようか。曰く、
《9条改憲 NO!》
《憲法守り 生かせ!》
異論は全くない。当然のことだ。
好天に恵まれたこともあり、それなりに大勢の参加者があちこちに屯している。おそらく数万人は下るまい。ただし、その大部分は中高年齢者であり、小生などはむしろ若輩者に分類されよう。
かつてのSEALDsに代表される若者の姿がほとんど見られないのは一体どういうことなのか。色とりどりの幟が林立し、組合や団体主導の催しであるのは明らかだが、広く一般人にも開かれたアクションであるだけに、十代・二十代の参加者が見られないのはひどく寂しく、不安な思いに駆られた。
誰か顔見知りの知人がいやしないかと周囲を見まわしたが、これだけの参集者のなかに知った顔を見つけるのは至難の業。われわれの少し前を歩く明るい臙脂色のコート姿に見覚えがあるなと思ったら、福島瑞穂さんだった。
一時間半ほどで議事堂をぐるり一周。そのあとは日比谷公園まで歩き、公園内の図書文化館のカフェで一服して解散。