なにやら諸事多忙、というほどではないのだが、ほぼ隔日で外出、あちこちに赴いては見聞を広めている。今日は忙中閑あり、終日在宅して疲れを癒すつもり。
"Sergey Prokofiev: Suite from Romeo and Juliet, Op. 64"
プロコフィエフ:
組曲《ロミオとジュリエット》(ヴィオラ&ピアノ版)
第一幕
■ 序奏
■ 街は目覚める
■ 少女ジュリエット
■ メヌエット(賓客の到来)
■ 仮面*
■ 騎士たちの踊り
■ マーキューショー
■ バルコニーの場
第二幕
■ 謝肉祭
■ マンドリンを伴う踊り***
■ 修道僧ローレンス邸のロミオ
■ マーキューショーの死
■ ティボルトの死**
第三幕
■ 朝のセレナード***
■ 百合の乙女の踊り*
第四幕
■ エピローグ:別れの場とジュリエットの死
(特記以外)=ワジム・ボリソフスキー編
*=デイヴィッド・グリューンズ編
**=マシュー・ジョーンズ編(マイケル・ハンプトン補筆)
ヴィオラ/マシュー・ジョーンズ (+リヴカ・ゴラーニ***)
ピアノ/マイケル・ハンプトン2009年2月27、28日、4月30日、モンマス、ワイアストーン・リーズ、ワイアストーン・ホール
Naxos 8.572318 (2011)
→アルバム・カヴァープロコフィエフのバレエ音楽《ロミオとジュリエット》に名手
ワジム・ボリソフスキー(ベートーヴェン弦楽四重奏団のヴィオラ奏者)が編んだヴィオラ版があるのは、昔ルドルフ・バルシャイが弾いたCDでその数曲を聴いて承知していたが、全部で十三曲も編曲していたとは知らなかった。本CDはそのすべてを収録したばかりか、新たな編曲を三つ加えて全十六曲、このバレエの聴きどころをほぼ網羅した形で聴けるようになった。実に愉しくも劃期的なアルバムである。
このCDの存在を知ったのはつい最近のこと。実を云えば、そのきっかけは前項で紹介したレベッカ・クラークである。
ここで演奏している
マシュー・ジョーンズは実演を聴いたばかりか、二言三言じかに言葉を交わしたことがある。2008年に訪英した際、ロンドンの教会堂でのリサイタルでレベッカ・クラークの名作《モルフェウス》を弾いた彼から、自主制作CDを手ずから購入したのだ。そのリサイタルで彼は《モルフェウス》を弾いたほか、このプロコフィエフの《ロミオ》ヴィオラ版から数曲を披露したのを思い出し、もしや録音もあるのではないかと検索したら、こういうアルバムが出ていることに遅蒔きながら気づいた次第。録音は2009年とあるから、実演を聴いた翌年の収録である。
マシュー・ジョーンズの演奏はとびきりの秀演ではないかもしれないが、ヴィオラ版《ロミオ》の良さを過不足なく伝える上質な演奏である。
ピアノの
マイケル・ハンプトン(ロンドンでの実演も同じこの人の伴奏だった)も、ツボをよく心得た誠実な音楽づくりに徹している。肉声に近い中音域で奏でられるとプロコフィエフならではの旋律の素晴らしさがいっそう際立つ。
本盤が贅沢なのは、ボリソフスキーがわざわざヴィオラ二挺用に編曲した二曲(「マンドリンを伴う踊り」と「朝のセレナード」)のために、名奏者
リヴカ・ゴラーニの登場を仰いだところだ。こういうところに手を抜かないところに制作者の良心が滲んでいる。ということで、幾重にも推奨に値する良質なアルバム。プロコフィエフ好き、ヴィオラ好きにはこたえられない。