自分が関わっている催事をここで喧伝するのは気が引けるのだが、今回のは小生はほんの脇役だから、まあいいだろう。映画上映会のお知らせである。
国内の商業施設で未公開の作品を紹介する「傑作ロシア映画ナイト」という催し。その一周年の記念イヴェントで、わが鍾愛の《一部屋半──あるいは祖国への感傷旅行 Полторы комнаты, или Сентиментальное путешествие на родину》(2008)が上映される。
2017年3月20日(月・祝)
東京、高円寺Pundit(パンディット)
→アクセス17時30分開場 18時30分上映開始
前売¥1,500/当日¥1,800 *入場時に1ドリンクご注文下さい。
予約は
→こちらから主催者の紹介文から引く。
■ 作品について
一部屋半。それが疎開からレニングラード(現サンクトペテルブルグ)へ戻った両親と主人公の少年に割り当てられた住まいだった。急増する都市人口に対し、住宅建設が追いつかず、戦争で住宅事情はさらに悪化していた。複数の家族が住居を分かち合って暮らしていたのだ。夢見がちな少年は、学業では落ちこぼれだったが、大勢の女性と恋をし、やがて詩人として頭角を現すが、反体制の烙印を押されて裁判にかけられ、ついには国外へ追放される。1987年にノーベル文学賞を受賞した詩人ヨシフ・ブロツキー(1940-1996)の生涯をモチーフとして、自らも反体制的芸術家として作品発表の場を奪われていた幻の映像作家フルジャノフスキーが作り上げたファンタジー。実写とアニメを組み合わせて作られたこの作品について、監督は語る。「これは〈ブロツキーについての〉映画だとは思わないでほしい。この映画はブロツキーの文学作品やスケッチ、伝記的事項などに基づいてはいるが、何よりも、この作品のひらめきと霊感を与えてくれたブロツキーの散文によりインスパイアされた作品なのだ」。
2008年/ロシア/125分/ビデオプロジェクターによる上映、日本語字幕付き
出演=アリサ・フレインドリフ、セルゲイ・ユルスキー、グリゴーリー・ジチャトコフスキーほか
脚本=ユーリー・アラーボフ、アンドレイ・フルジャノフスキー
監督=アンドレイ・フルジャノフスキー
撮影監督=ウラジーミル・ブルィリャコフ
製作=アンドレイ・フルジャノフスキー、アルチョム・ワシリエフ
共催:エイゼンシュテイン・シネクラブ
協力:日本ユーラシア協会新作ロシア映画上映会小生からのお誘い文。フェイスブック記事から転載する。
アンドレイ・フルジャノフスキー監督作品《一部屋半》(2008)をご存知ですか。ノーベル賞を受賞したロシアの亡命詩人ヨシフ・ブロツキーが数十年ぶりに故郷レニングラードに帰還を果たす。そのとき彼の脳裏には、少年時代以来この街で過ごした思い出──それはスターリン時代から「雪融け」にかけての激動のソ連史そのものだ──が走馬灯のように去来する。この旅こそは、レニングラードを「世界で最も美しい都会」と呼ぶ詩人が万感をこめて臨んだ「感傷旅行」にほかならなかった。しかし・・・。
数年前、小さな上映会でこの映画に巡りあって、小生は感動のあまり、椅子から立ち上がることができなかった。実在の詩人ブロツキーの生涯を扱いつつも、フルジャノフスキー監督は奔放なイマジネーションを駆使して、美しい古都に育まれた詩人の遍歴にまつわる「魂の真実」を、自由自在に、ラプソディックに、心の底からの共感を滲ませ、切々と、淡々と描き出す。これは十年に一本、いや数十年に一本の映画なのだと直感した。
反体制的な姿勢を貫きながら、旧ソ連時代から数々のアニメ映画を世に問うてきた巨匠フルジャノフスキー監督が、七十歳を目前にして挑んだ劇映画の「処女作」。その映像の完成度の高さと、想像力の豊かさには脱帽するほかない。
ロシア文化を愛する人すべてに、声を大にしてお薦めしたい。こんな凄い映画、滅多にないですよ。
小生は上映後、主催者の井上徹さん、渡辺裕美さんとともに登壇し、思いつくまま少しだけしゃべる予定。
ブロツキーについても、フルジャノフスキー監督についても、まるで門外漢なので冷や汗ものだが、とにかく愛してやまない作品だから、その尽きせぬ魅惑について話すことになろう。
追記)
この映画が2013年に英国で "A Room and a Half" として封切られたときの予告編をご覧ください。
→ここ