BBC Radio 3「今週の作曲家 Composer of the Week」には周到な解説に教えられるところが大きい。今やっているのはプロコフィエフ、それも1936年にソ連帰国を果たしてから以降の後半生のみに焦点を当てた興味深い内容だ。題して "Back in the USSR"。番組のHPから概要を訳しておこう。
セルゲイ・プロコフィエフはスターリンと同じ日に亡くなった。だから彼の葬式用に花は残されていなかった。こうしてプロコフィエフのロシア帰還は皮肉にも陰鬱な結末を迎えるのだが、1930年代半ばに意気揚々となされた凱旋帰国はほどなく暗転し、国家による芸術家と知識人の粛清により、彼の生活は危機に瀕した。今週のドナルド・マクラウドは夥しい傑作群──《ロミオとジュリエット》《ピーターと狼》《戦争と平和》《アレクサンドル・ネフスキー》そして第六交響曲を含む──を探索し、1948年にソ連の文化当局がプロコフィエフに与えた手酷い攻撃について検討する。彼の音楽と健康はその痛手からついに立ち直ることがなかったのだ。
月曜から金曜まで、全五回のタイトルと、ストリーミング音源(一か月間有効)のリンク先、各回で紹介される楽曲をざっと記しておこう。
第一回/放蕩息子の帰宅 A Prodigal Son Returns →ここ第二回/ロミオとジュリエット Romeo and Juliet →ここ第三回/アレクサンドル・ネフスキー Alexander Nevsky →ここ第四回/戦争と平和 War and Peace →ここ第五回/攻撃と後退 Denunciation and Decline →ここ
■《キジェー中尉》、ヴァイオリン協奏曲 第二番、《プーシキニアーナ》、《ピーターと狼》
■ さまざまな編曲による《ロミオとジュリエット》
■「勇敢に進め」(七つの歌)、革命二十周年記念カンタータ、チェロ協奏曲、《アレクサンドル・ネフスキー》
■《シンデレラ》、弦楽四重奏曲 第二番、《戦争と平和》、フルート・ソナタ
■ ピアノ・ソナタ 第八番、交響曲 第六番、ヴァイオリン・ソナタ 第一番、《平和の守り》、《乾杯》
第四回目まで聴き進んだところだが、史実を細部までよく調べてあって感心する。こういう番組を日常的に聴ける英国のラヂオ環境が羨ましくてならない。