昨日の小春日和とはうって変わって凍えるような曇天だ。別室で処分するLPレコードの仕分けをしていたら、不自然な姿勢と部屋の寒さで腰が痛くなってきた。今は本宅に戻って一息ついているところ。最近ふと手にしたCDを聴いてみる。
"Music of Percy Grainger: Dished Up for Piano by the Composer"
グレインジャー:
ストランド街のヘンデル
ウォーキング・チューン
愉快な王様
岸辺のモリー
ユトランド民謡メドレー
私のジョンよ、もう一度
子守唄
サセックスの役者たちのクリスマス・キャロル
老練な猟師
騎士と羊飼の娘
組曲《早わかり》
■ 到着ホームで唄う鼻歌
■ 陽気な、しかしもの悲しげに
■ 田園曲
■ ガム=サッカーズ行進曲
コロニアル・ソング
シェパーズ・ヘイ
アイルランド、デリー州の調べ
カントリー・ガーデンズ
ピアノ/ナイジェル・コックス1986年(?)、マサチューセッツ
Titanic Records Ti-155 (1986)
→アルバム・カヴァーLP、CDを通じてパーシー・グレインジャーのアルバムはたいがい聴いてきたと自負していたら、こんな未聴盤があって驚く。それもグレインジャー復興の黎明期にあたる1980年代の先駆的演奏。ジャマイカ出身ながら英国で学び、米国の大学で教えるコックスは単に水際立ったテクニシャンに留まらず、「コロニアル・ソング」や「アイリッシュ・チューン」ではしみじみ情感を滲ませる。掬すべき好演。
"Paul Hindemith - The Louisville Orchestra"
ヒンデミット:
室内音楽 第二番 作品36 No. 1*
ヴィオラと大室内管弦楽のための協奏音楽 作品48**
ピアノと管弦楽のための協奏曲***
ピアノ/リー・ルヴィジ* ***
ヴィオラ/ラファエル・ヒリヤー**
ジョージ・メスター(ホルヘ・メステル)指揮* **
ローレンス・レイトン・スミス指揮***
ルイヴィル管弦楽団1968年6月6日*、1969年5月7日**、1987年11月7日***、
ルイヴィル、マコーリー劇場
First Edition Music FECD-0022 (2003)
→アルバム・カヴァー米国ケンタッキー州ルイヴィルのオーケストラはロックフェラー財団の支援を受けながら、永く同時代作品の演奏に努め、委嘱作品の世界初演も数多い。その成果は彼らのLPレーベル「ファースト・エディション」に丹念に記録されてきたが、それらの音源は21世紀になって作曲家別に整理され、CDとして復活した。本盤はそのヒンデミット篇。小生のお目当ては無論ラファエル・ヒリヤーが客演した作品48のヴィオラ協奏曲。彼が渡辺暁雄&日本フィルと《シュヴァーネンドレーアー》を録音した翌年の収録音源なので期待したが、作品も演奏も録音も今ひとつの出来だ。
"Strauss - Wagner - San Francisco Symphony Orchestra - Monteux"
シュトラウス:
死と変容
ワーグナー:
ジークフリート牧歌
ピエール・モントゥー指揮
サン・フランシスコ交響楽団1960年1月23~24日、サン・フランシスコ、カリフォルニア・ホール
Sony 88843073482-38 (1969/2014, from 40CDs)
→アルバム・カヴァー晩年のモントゥー翁が古巣サン・フランシスコへのセンチメンタル・ジャーニーを行い、この楽団と唯一のステレオ録音を残した折の貴重な音源。《ジークフリート牧歌》のみ歿後の1965年ベートーヴェンの埋草としてひっそり世に出、当初想定されたこの《死と変容》とのカップリングは69年に一度LPで出たきり。生前も死後もモントゥーは随分と冷遇されてきた。それはそれとして、半世紀ぶりに正当な形で再登場した本CDに聴くシュトラウスとワーグナーは素晴らしい聴きもの。老練なタクトから自在にして融通無碍、瑞々しい音楽が迸り、思わず涙が出そうになる。