前々から発売が予告されていて、今か今かと待ち受けていたディスクが昨日ようやく届けられた。早速ターンテーブルに載せ、就眠前と起き抜けに聴いて感動を噛みしめている。こんなピアノを弾く人だったのか。
"Henri Gil-Marchex: Columbia 78rpms & Broadcast Recordings"
ドビュッシー: ミンストレルズ*
ドビュッシー: ビーノ門*
クープラン: 翻るバヴォレ*
ダカン: 郭公*
ラモー: タンブーラン*
ラモー: メヌエット 第十番 ト短調**
スカルラッティ: ソナタ ハ長調 L. 104 (K. 159)**
モーツァルト: トルコ行進曲**
バルトーク: アレグロ・バルバロ**
ジル=マルシェックス:
昔日の日本の四つの映像***
■ 出雲の秋月
■ サムライの仇討
■ 奈良の庭
■ 吉原帰り
ヴァイオリンとピアノのためのフランス組曲****
七つの芸者の歌*****
■ 月の姫君
■ そなたを知ってこのかた
■ 楓の葉
■ 恋患い
■ わが望み
■ 薔薇と葦
■ さて
ピアノ/アンリ・ジル=マルシェックス* ** *** **** *****
ヴァイオリン/ポール・ブーケ****
ソプラノ/ナディーヌ・ソートロー*****1927年10月17日、パリ*
1927年12月14日、パリ**
1954年6月12日、パリ***
1952年3月22日、パリ****
1957年2月26日、パリ*****
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ジル=マルシェックス: 出雲の秋月******
ラヴェル/ジル=マルシェックス編: 「五時のフォックストロット」幻想曲*******
ピアノ/白石朝子******、林川祟*******2014年10月26日、東京・東長崎、尾方邸(リサイタル実況)******
2015年5月15日、東京(スタジオ収録)*******
サクラフォン Sakuraphon SKRP 78002 (2015)
→アルバム・カヴァー往年のフランスのピアニスト、
アンリ・ジル=マルシェックス Henri Gil-Marchex (1894~1970)の世界初の覆刻CDである。今や本国でも完全に忘れ去られてしまったが、アルフレッド・コルトー門下の逸材で、生前のラヴェルからは全幅の信頼を得ていた。自ら作曲も手がけたが、これらも今や顧みられることがない。
云うまでもないことだが、私たち日本人はこのジル=マルシェックスに格別の恩義がある。1925年から四度に及ぶ来日公演で、フランス・バロックから同時代音楽まで、とりわけプーランク、ミヨー、ストラヴィンスキー、バルトークらのピアノ曲を数多く日本初演した。その演奏は松平頼則、大澤壽人、清瀬保二ら若き作曲家や、作家の梶井基次郎らに多大な感銘を与えた。このCDは戦前にSP録音されたクープランからバルトークに及ぶ八曲に加え、パリの放送局に残された1950年代の貴重な自作自演の数々(すべて初出)を収録する。
かてて加えて、ジル=マルシェックス研究家として優れた業績のある
白石朝子さんが弾いた彼の「出雲の秋月」(名演!)、ゴドフスキーやホロヴィッツのピアノ編曲の研究で知られる
林川祟さんによるラヴェル(ジル=マルシェックス編)「五時のフォックストロット」がボーナス・トラックとして付く。
実に至れり尽くせり、まさに夢の実現と呼ぶべきディスクの登場である。これを実現させたサクラフォンの
夏目久生さんに満腔の感謝を捧げたい。このような企てがなされる限り、わが国の音楽状況もまんざら捨てたものではないと思えてくる。
(まだ聴きかけ)