(承前)
そういう次第で、プロコフィエフの永住帰国は誤算と蹉跌の連続だった。
「音楽大使」として国境を自由に往還し、故国と欧米との文化的な架け橋になろうという彼の目論見は脆くも崩れてしまった。かかる行動はスターリン時代のソ連ではスパイ行為と看做され、迂闊な発言は命取りになりかねない。誰もが密告し密告されるという恐怖の監視体制のただなかに彼は否応なく身を置いたのである。芸術家の営みのすべては国家の厳しい統制下に置かれていた。
そうした状況に遭遇した辛さは想像に余りある。だがプロコフィエフの公式発言からは彼の失望や苦衷は微塵も窺い知ることができない。では彼の書いた音楽はどうだろう。そこに隠されたメッセージが潜んではいないだろうか。
音楽ネットワーク「えん」
第四回 レクチャー・コンサート
《プロコフィエフのメッセージ──歌にこめられた嘆き》
2015年4月19日(日)
午後2時開場/午後2時30分開演
ライブ&カフェ 高円寺Grain
■ 交通案内/
JR中央・総武線(各駅停車) 高円寺駅北口より徒歩二分
中通り商店街(駅を背に左方向)すぐ右手
中華料理店「成都」二階
■ 住所/杉並区高円寺北3-22-4 UKビル二階
■ 電話/03(6383)0440
入場料/3,000円(大学生以下2,000円)
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出演/
小林 円(ソプラノ)+榊原涼子(ピアノ)
土岐祐奈(ヴァイオリン)+石井楓子(ピアノ)
沼辺信一(解説)
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曲目/
プロコフィエフ:
五つの歌詞のないメロディ 作品35
五つのメロディ 作品35bis
シューマン:
悲哀 Wehmut ~歌曲集「リーダークライス」作品39 より
プロコフィエフ:
ピアノ・ソナタ 第七番
ヴァイオリン・ソナタ 第一番
ほか
1936年、ソ連に帰還したプロコフィエフが思いがけず見舞われた危機的な状況と、そのなかで彼が作品に密かに忍び込ませたメッセージについて解説を交えつつ、彼の音楽に新たな光を当てようとする意欲的な企てです。演奏会プログラムになぜシューマンの歌曲が紛れ込んでいるのか、その理由は当日わかります。
この演奏会を主宰する音楽ネットワーク「えん」は、優れた若手演奏家に活動の場を与える目的で1992年に創設された市民サークルです。これまでに五百回を超えるサロン・コンサートを催しており、小生は聴衆の一人として何度かその会に参加しています。昨年末、コンサート後の懇親会でたまたまプロコフィエフについて雑談していて、瓢箪から駒が出るような塩梅で、このレクチャー・コンサートの企画が持ち上がりました。プロコフィエフの音楽を愛する方、芸術家と政治・社会との関わりに興味をお持ちの方はぜひ足をお運びください。
当日いきなりの来場も歓迎ですが、できれば事前に予約のご連絡を頂ければ幸いです。連絡方法は「えん」HPのポータルサイトに記されています。