一昨日・昨日と、一泊二日で秋田と山形に赴いた。年に二回ある美術館ツアーの添乗である。どちらの県にも初めて足を踏み入れる小生には引率者の資格は殆どなく、四十人の参加者と一緒にバスに揺られ、未知のミュージアムを観て廻るだけという頼りない案内人に終始したのは我ながら不甲斐ない。
往還に飛行機を利用したので時間がたっぷり使え、二日間で六つもの美術館を訪問できたのは幸いだったが、最も期待していた
秋田県立美術館には大いに失望した。横幅が二十メートルを超す藤田嗣治の超大作《秋田の行事》はなるほど圧巻だが、新しくできたという展示空間が妙に手狭で作品に馴染まず、むしろ作品を殺している。設計者の安藤忠雄はどこをどう勘違いしたのだろう。
これとは対照的だったのが、酒田市の
土門拳記念館。1983年開館というから、もう三十年以上も経た建物なのに、古びたところのない、シャープで清冽な空間に思わず襟を正す。「古寺巡礼」「こどもたち」という土門の二大シリーズを間近に観られたのも眼福そのもの。手前に池、背後に小高い丘というロケーションを見事に生かした若き谷口吉生の並々ならぬ手腕に感じ入った。
一泊旅行の楽しみは宿の風呂と夕食である。今回は山形の奥深い隠れ里といった趣の
瀬見温泉にひっそり佇むホテル「観松館」。山並と渓流に挟まれた鄙びた旅館だが、温泉と食事はどちらも逸品である。たっぷり湯に浸り、山海の珍味をたらふく賞味して大満足。機会があったらぜひ再訪したいものだ。
二日間の旅を存分に愉しんだが、一夜明けた今日はさすがに全身がだるい。起き上がるのも難儀だったが、午後になって少し元気が回復したので、家人に同行して地元の映画館で周防正行監督の最新作《
舞妓はレディ》を観た。
予想に反して純然たるミュージカルではなく「ところどころ歌のあるコメディ」という範疇。語り口が平板で盛り上がりを欠く憾みはあるが、主役の上白石萌音が初々しく可愛いのと、《緋牡丹博徒》から四十数年ぶりという富司純子(むしろ藤純子と書きたい)の歌声が聴けたのとで、まずは満足。