今日は昼から外出、ずっと歩き回っていて疲労困憊し、帰宅後は夕食もそこそこに横臥。やっと目覚めてシャワーを浴びてきたところだ。またぞろ布団の上で横になる。よほど草臥れたのだろう。
眠りに就く前にディスクを一枚だけ。お馴染の「四つの最後の歌」、つい先日になってドイツから届けられたものだ。
"Richard Strauss: Hymne an die Liebe- Georgina von Benza"
リヒャルト・シュトラウス:
四つの最後の歌*
■ 春
■ 九月 ※→YouTube音源
■ 眠りに就こうとして
■ 夕映えに
献呈*
ツェツィーリエ*
明日*
愛の讃歌 Liebeshymnus 作品32-3*
愛への頌歌 Hymne an die Liebe* ~「ヘルダーリンの三つの頌歌」 作品71
交響詩「ドン・フアン」
ソプラノ/ゲオルギーナ・フォン・ベンツァ*
マルコ・デ・プロスペリス指揮
ザールブリュッケン放送交響楽団2003年2月17~22日、ザールブリュッケン、ザールラント放送
Tade TADE CD 002 (2004)
→アルバム・カヴァーゲオルギーナ・フォン・ベンツァはカルパト=ウクライナ(ハンガリー、スロヴァキア、ウクライナの国境地帯)に出自をもつハンガリーのオペラ歌手で、本名はどうやら Benza Györgyinek というらしい。
ミュンヘンなどドイツの歌劇場を中心に活躍し、《アイーダ》《トスカ》《蝶々夫人》のタイトルロールや、《ラ・ボエーム》のミミ、《エヴゲニー・オネーギン》のタチヤーナなどを当たり役とする(彼女のHPによる)。2001、02、04年と来日を重ねているようだが、いずれもオペラ公演ではないガラ・コンサートだったらしく、わが国での知名度は殆どないに等しかろう。小生もまるで知らない人だ。
このシュトラウス歌曲アルバムの存在は前々から気づいてはいたが、ほぼ自主制作に近い盤だったようで、昨年だったか版元に直接メールで問い合わせたものの梨の礫。入手は絶望的に思えたが、最近amazon.de でも扱いがあるのに気づき、註文しておいたもの。かつてはCD完全蒐集を目論んだこともあった鍾愛の「四つの最後の歌」だが、近年は録音数が無闇と多く、ソプラノ歌手なら猫も杓子も録音したがる傾向に鼻白みもするのだが、こうして一旦CDの存在に気づいてしまうと、聴きたくて矢も楯も堪らなくなる。ジャケット写真もなかなか宜しい。
さて手に入れるまでの苦労の大きさに、現物を耳にしたときの感銘が比例するとは限らないのは世の常だ。ゲオルギーナ・フォン・ベンツァの声は決して悪くないが、オペラ歌手がシュトラウス歌曲を歌う際の通弊なのだろう、大きなうねりを作るのは巧みだが、ドラマティックな力が奏功する反面、細部の彫琢が今ひとつ行き届かない憾みがある(むしろ併録された「明日」や「愛の讃歌」のほうが好もしい)。思いつくまま挙げると初演者フラグスタートやビルギット・ニルソン、近年ではデボラ・ヴォイトが同じ傾向だったと思う。伴奏指揮のデ・プロスペリスは多分ベンツァの夫君だと思うが、特に個性的な解釈を施すでなく、通り一遍の予定調和。ザールのオーケストラの力量もまあ並。ほれぼれする箇所が少しもない。
・・・とまあ、散々ケチをつけてしまったのは、手元には半世紀を上回る歴代の録音が汗牛充棟、名唱名演がずらり軒を連ねるものだから、それらに伍して新たに自己を主張するのは容易ではない。なにしろ本盤は架蔵する実に百六枚目の「四つの最後の歌」なのだ。もう充分か? いや、見つかる限りもっと聴きたい。
→四つの最後の歌 ディスコグラフィ =4 (2001~2014)