引き続き「ダフニス」。モントゥーの指揮を「極め付き」と呼ぶのになんの躊躇も要らないが、この曲には更にそのまた上を行く凄まじく破天荒な演奏が存在するのは周知の事実だろう。百周年の記念日はついさっき過ぎてしまったが、この決定的名演を聴くまでは心安らかに眠ることはできない。
「政治的判断」という名の国家犯罪に、どのみち今夜はおちおち安眠できそうにない。「国民の生活を守る」ため「国民の生命を危機に晒す」とは自己撞着そのもの。悪魔の所業というほかない。そもそも魚類に政治を委ねたのが間違いだったのだ。
ラヴェル:
ダフニスとクロエ(全曲)
シャルル・ミュンシュ指揮
ボストン交響楽団
ニュー・イングランド音楽院合唱団
1961年2月26、27日、ボストン、シンフォニー・ホール
BMGファンハウス RCA BVCC 37323 (2002)
バレエ「ダフニスとクロエ」を隅々まで熟知したモントゥーとは対蹠的に、ミュンシュは純粋にシンフォニックな「音の壁画」としての「ダフニス」を志向する。それも徹底的に深いところまで。ラヴェルの音楽と自身の肉体とが不可分の境地に到るところまで。