記念年はもう終わってしまったので時節外れもいいところだが、久しぶりに思い出したような按配で
パーシー・グレインジャーを無性に聴いてみたくなった。ならば比類なき名手による極め付きの名演奏で。
"The Grainger Edition vol. 17: Works for solo piano 2"
グレインジャー:
虎よ、虎!
玄人の猟師
サセックスの無言劇役者のクリスマス・キャロル
宿敵の兄弟
オーストラリア高地の歌
収穫の讃歌
陽気な王様
リスボン(ダブリン湾)
田園詩
寡婦の祝宴
愛のために死す
ホークストウ農場
元気な若い船乗り
心の冷たいバーブラ・ヘレン(エレン)
ブリストルの街
海の歌のスケッチ
岸辺のモリー
到着ホームで唄う鼻歌
羊飼のヘイ
カントリー・ガーデンズ
モリスもどき
ガム吸い族の行進曲
植民地の歌
幸福な部族の天幕
陽気な、だが悲しげな
ストランド街のヘンデル
私のロビンは緑の森へ
ピアノ/ペネロピ・スウェイツ
2001年3月1~3日、ロンドン、ナイツブリッジ、セント・ポールズ教会
Chandos CHAN 9919 (2002)
ああ、なんという懐かしさだろう。やっぱりグレインジャーは特別な人だ。体が弾み、心が安らぎ、胸が締め付けられる。そう感じさせてくれるのは
ペネロピ・スウェイツならでは。作曲家の真髄を知り抜いたピアニストだからなのだ。天下一品とは彼女の演奏を指す言葉だろう。女史のグレインジャー実演を間近に聴いた昨年11月27日をしみじみ追憶する。何やら遠い昔の出来事のような気がするのは何故だろう?
「没後50年記念
グレインジャー音楽祭2011」と銘打たれた奇蹟のようなあの催しのことは忘れがたい。ほんの数日前、その主宰者の宮澤淳一さんから「プロジェクト報告」と題された冊子を恵贈された。当日の基調講演とシンポジウムの報告三本を細大漏らさず収録した重宝な文献。日本語で読めるなんて夢みたいだ。一過性のイヴェントに終わらせない心意気にうたれる。さすが大学で催しただけのことはある。