日附は変わったが、もう少しプロコフィエフを聴いていたい。そこで取り出したのは飛びきり珍しい実況録音盤だ。こんな演奏が音として遺されていたなんて!
"Prokofiev/ Schumann: Piano Concertos"
プロコフィエフ:
ピアノ協奏曲 第三番*
シューマン:
ピアノ協奏曲**
ピアノ/サンソン・フランソワ
カレル・アンチェル指揮
チェコ・ フィルハーモニー管弦楽団*
カルロ・マリーア・ジュリーニ指揮
フランス放送国立管弦楽団**
1958年10月30日、パリ、サル・プレイエル(実況)*
1959年4月18日、パリ、シャンゼリゼ劇場?(実況)**
Archipel ARPCD 0533 (2011)
チェコ・ フィル西欧楽旅時のパリ公演にフランソワが独奏者として加わったという稀有な記録。カレル・アンチェルにとってフランソワとの共演録音も、プロコフィエフの第三協奏曲の録音も、今のところこれが唯一だから存在価値は計り知れない。因みにアンチェルは若き日(1934年4月4日)に作曲者自身のピアノで第一協奏曲を共演し、第三交響曲のプラハ初演を敢行したほどプロコフィエフとは深い因縁がある。
思わず期待に胸がときめく。ところがその首尾は如何と問われたなば、いやはや、とても褒められた代物ぢゃないと答えるしかない。
何しろフランソワのピアノが自由奔放と云えば聞こえがいいが勝手気儘、テンポをほうぼうで恣意的に操作し、急ぎ足になったかと思うとその場に立ち止まり、また唐突に駆け出すという我儘放題。「ピアノの詩人」どころか、足どりは「酔いどれ詩人」さながら。片やアンチェルは名にし負うイン・テンポ遵守の古典主義者だから、両者の芸風は正反対、もともと噛み合う筈がないのだ。
あちこちアンサンブルは綻び、縦の線は全く揃わない。リハーサルなしのぶっつけ本番だったか、あるいはフランソワが予測不能の即興に走ったのか。そのどちらかだろう。とにかく全曲が終わると息も絶え絶えの有り様。それでも客席からはブラーヴォが飛ぶ。よほどスリリングだったということか。
こりゃかなわん。このままぢゃどうにも安眠できない。やはり正規盤を聴こう。
"Album Prokofieff"
プロコフィエフ:
ピアノ協奏曲 第三番*
「束の間の幻影」抜粋(Nos. 1, 3, 6, 17, 4, 18)**
トッカータ 作品11**
バルトーク:
二つの悲歌***
ピアノ/サンソン・フランソワ
アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団*
1953年3年23、26日*、4月4日**、パリ、シャンゼリゼ劇場
1955年11月4日、パリ、サル・ド・ラ・ミュテュアリテ***
東芝EMI TOCE-55440 (2002)