生憎の雨に祟られた。今日は
セルゲイ・プロコフィエフの百二十一回目の誕生日。キリのいい年ではないので大袈裟に祝うこともないのだが、それでも何かディスクをかけながら不世出の天才を偲ぶことにしよう。
"Sergie Prokofiev: Complete Music for Cello and Piano"
プロコフィエフ:
バラード 作品12 (1912)
無伴奏チェロ・ソナタ 作品133 (1952)
アダージョ 作品94 bis (1944) ~バレエ「シンデレラ」
アンダンテ* (ロストロポーヴィチ編) ~チェロ小協奏曲 作品132 (1952)
チェロ・ソナタ 作品119 (1949)
チェロ/アレクサンドル・イワーシキン
ピアノ/タマス・ヴェスマス
伴奏/カンタベリー・チェリスツ*
1996年、オークランド大学音楽学校、クライストチャーチ(セント・バーナバス教会)
Ode Records CD MANU 1517 (1996)
プロコフィエフのチェロ独奏曲を漏れなく集めた重宝な一枚。今やチェロ界の重鎮の仲間入りを果たしたイワーシキン教授が若き日にニュージーランドで教鞭を執る傍ら収録したもの。もはや稀覯盤なのではないか。たまたまお茶の水の中古店で嘘のような安価にて手にした。
実は殆ど同内容の再録音(Chandos/ 2002録音)も手許にあるのだが、今日はこちらの旧盤を聴こう。しみじみ味わい深い名演奏なのだから。
イワーシキン教授のチェロは恩師ロストロポーヴィチのような圧倒的な威力は発散しないものの、渋い音色と節度ある歌心を伴う誠実なもの。そのプロコフィエフは天下一品である。2010年12月たまたまロンドンで耳にしたチェロ・ソナタの実演がたいそう素晴らしかったものだから、数日後にお目にかかった折、「1971年に東京で聴いたロストロポーヴィチの演奏よりも良かったですよ」と率直な感想を申し述べたところ、教授はすっかり恐縮されたご様子で「そんなことはあり得ないよ、スラーヴァを超えるなんて」と言下に否定されたものだ。