演奏会にとってプログラム構成こそは命である。限られた時間内にどんな曲目をどのような順に配するか。全体をいかなるコンセプトで統御するのか。熟慮して演目編成を練り上げたコンサートは、既にその成功の半分を約束されたようなものだ。
その意味で今朝の演奏会は比類がなかった。なにしろ選曲が完璧なのである。
カフコンス演奏会 第92回
Cafconc by Stravinsky Ensemble
11:00-11:50
東京、本郷「金魚坂」
花蝶風月
~記念イヤーの作曲家による作品集
ドビュッシー:
春が来た Voici que le printemps
薔薇 Les roses
蝶々 Les papillons
ゼフュロス Zéphir
ピエロ Pierrot
アイアランド:
四月 April*
春の炎 Fire of spring*
ディーリアス:
四つのイギリスの古詩 Four old English lyrics
■ それは恋する男とその恋人 It was a lover and his lass
■ いとも白く、柔らかく、甘き彼女 So white, so soft, so sweet is she
■ 春、甘き春 Spring, the sweet spring
■ 水仙に To daffodils
マスネー:
二つの小品 Deux pièces*
■ 黒い蝶々 Papillons noirs
■ 白い蝶々 Papillions blancs
明日は愛するだろう Vous aimerez demain ~四月の詩 Poème d'avril
四月はそこに! Avril est là!
ソプラノ/渡辺有里香
ピアノ/川北祥子 (*=ピアノ独奏曲)
19世紀末から20世紀初頭にかけての英仏の歌曲とピアノ曲のなかから春に因んだ音楽ばかり蒐める。そこまでなら少し知恵のある演奏家だったら思いつく着想だろうが、そこから更に「花鳥風月」ならぬ「花蝶風月」に纏わる曲だけを選り抜く。しかも採り上げる作曲家四人が悉く今年アニヴァーサリー(
ドビュッシーと
ディーリアスが生誕百五十年、
マスネーが歿後百年、
アイアランドが歿後五十年)だというのだから驚く。こんな凝りに凝った選曲の演奏会がまたとあろうか。ほらね、完璧でしょう?
ドビュッシーの歌曲五作はいずれも「意中の人妻」ヴァニエ夫人のため書かれ彼女に献呈されたもの。近年ようやく楽譜が出た。小生も「春が来た」「ピエロ」位しか聴いた憶えがない。続けて英国の「印象主義者」アイアランドとディーリアスを聴くのも興趣に富む。ディーリアスの歌曲もまた生で聴く機会が滅多にないからアニヴァーサリーに相応しい選曲だ。アイアランドのピアノ曲の美しさにもちょっと溜息。マスネーに至っては寡聞にして知らない曲ばかり。
(まだ書きかけ)