昨日は暑いさなかに上京し、日比谷公會堂脇で開かれてゐる「素人の亂」反原發集會をちよつと覗く。舊知の
荒川君が地べたにしやがみ込んでチェルノブイリ關聯の新作DVDを賣つてゐる。やがて
大輔も現れたので暫し二人で販賣の手傳ひ。
五時になつてデモ隊が賑々しく出發するのを横目に見ながら
大輔と小生は中座し、地下鐡千代田線で代々木公園驛まで移動。早く着いたので近邊を探索してゐると、
のり君が此方へ向つて歩いて來る。この界隈は彼の根城なので一緒に徘徊して穴場の飲食店を教へて貰ふ。俄かに空腹を覺へた小生は昔馴染のスパゲッティ老舗「ハシヤ」で名物「生ハムのサラダスパゲッティ」を賞味。聊か値の張る一品だが特製ドレッシングが美味、麺は歯應へ充分、量もたつぷりで大満足。此處でこれを食べるのは十五年ぶり位だらうか。嬉しい事に味は昔と變つてゐない。
食べ終へてふと時計を見遣ると約束の集合時刻の六時キツカリ。今日の幹事役の
のり君は時間に嚴しい御仁なのだ。慌てゝ會計を濟ませ小田急線の代々木八幡驛改札へと引き返す。大丈夫まだ全員は揃つてゐなかつた。
今回の參集メンバーは發起人
のりを筆頭に、
大輔、
おらが、
敬実、
宮崎、
イケチン、
あっこ、小生の計八名。某オフィスの部屋を借り切つてヴィデオ上映をしやうといふ目論見である。なので先づは飲食物の買ひ出し。一人千円ずつ出し合ひ、道すがら銘酒屋や惣菜屋やスーパーで酒とつまみ各種を仕入れる。このワクワク氣分は何だか皆で下宿を共有した荻大時代を髣髴とさせる。あれから三十六年になる。
六疊程の洋室に八人が汗牛充棟。先づは罐麥酒で乾杯だ。
早速に傍らの再生装置で古い映像を鑑賞。嘗て一同全員が裏方として關はつた催しの記録である。文太が歌ひ、梨絵が舞ひ、芳雄がギターを彈き語りする…。先般亡くなつた原田芳雄の若々しい雄姿に思はず息を呑む。三十六年の時の流れを否應無く思ひ知らされ肅然と言葉を失ふ。
やがて
おらがが徐に鞄から一枚のDVDを取り出す。これ觀るべしと。
嗚呼お懷かしや《
野良猫ロック 暴走集団'71》である。藤田敏八監督作品、出演は原田芳雄、藤竜也、梶芽衣子、地井武男、郷鍈治、戸浦六宏その他。再開發直前の西新宿の造成地で氣儘な生活を送る瘋癲族集團が仲間の失踪を機に伊豆の別荘に立て籠り、地元ボスやその配下の愚連隊と對決する…といふ話だ。
久し振りに觀るものだから細部の記憶が聊か曖昧で、「あれゝこんな展開だつたか」「彼奴は未だ死なないのか」といつた意外性や驚きがある。アメリカン・ニューシネマやマカロニ・ウェスタンとの類縁性が著しいのは流石に時代である。藤田敏八の演出は登場人物への共感を煽りつゝ、反面クールに突き放すやうな趣もあつて一筋繩では行かない。そこがまあ魅力でもあるのだが。
ストーリーには方々で御都合主義的な展開や綻びもあるから突つ込み處が満載。皆でワイワイ云ひながら一緒に觀るのが最高に愉しい映畫だ。
所定の時間が須臾にして過ぎ、上映會は恙無く終了。気が附くと潤澤にあつた筈の酒も肴も綺麗サツパリ無くなつてゐる。幹事の
のり君に感謝しつゝ散開…の心積もりだつたのだが、澁谷驛へ向かふ途中で
敬実君から「もう一軒」の聲ありて六人して安居酒屋に立ち寄る(酩酊して店名は失念)。ここでも更に往時の愉快な思ひ出やら昨今の憂鬱な現實やらを縷々語り合ふ内に荻大の夜は更けていつた。