家人に命ぜられるまゝ朝からヴェランダでネット張り。トレリスのやうな按排で垂直に網を仕立て、苦瓜や風船蔓を這はせれば簾や葭簀の代はりになるだらうとの目論見だ。ほんの十數分で單簡に濟むかと思ひきや設置作業は豫想以上に難澁して小一時間も惡戰苦闘。全身汗みどろになる。なのでシャワーを浴びた後、晝食は近所の珈琲屋にて涼みがてら輕くサンドヰッチで。
午后は別室との間を何度も往還してレコードと本の仕分け箱詰め作業。拭つても拭つても顔から汗が滴り落ちる。
流石に草臥れ果て喉も乾いたのでちよつと此處で息抜き。
"Collection musique française"
ジャック・イベール:
管絃樂の爲の「寄港地」*
絃樂四重奏曲**
フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、バソンの爲の三つの短い小品***
フルートとハープの爲の間奏曲****
嬉遊曲*****
物語(抜粋)******
* ポール・パレー指揮 デトロイト交響樂團
** パルナン四重奏團
*** パリ管樂五重奏團
**** フルート/ジャック・カスタニェ、ハープ/エリザベト・ファントン=ビノシュ
***** ジャン・マルティノン指揮 パリ音樂院管絃樂團
****** ジネット・ドワイヤン
1962年、デトロイト*
1956年** *** ******、1960年*****、1965年****、パリ
Universal/ Accord 472 320-2 (2002)
一言で云ひ表はすならば夢のやうなディスク。
珠玉の佛蘭西音樂の寶庫 Adès と Véga の權利を繼承してゐたムジディスク社が大手ユニヴァーサル社に身賣りし、そのユニヴァーサルがマーキュリーやデッカ迄も吸收倂合して、膨大な音源を擁する巨大カムパニーを形成した。さうした複雑な事情から往時の名演奏が思ひも寄らぬ組み合はせで再編され世に出るに到つた。抑々
パレーと
マルティノンが同じディスクに名を連ねるなぞ前代未聞の椿事である。
かくして新世紀初頭にどつと出た作曲家別の佛蘭西音樂アントロジーの一枚。この「イベール篇」最大の歡びは、
ジネット・ドワイヤンが彈く稀少な「
物語 Histoires」がひつそり初覆刻され、さり氣なく末尾に收められた處にある。
周知の通りイベールの「物語」は十曲から成る。いづれも一分半から三分程度の短い曲だが、異國の宝石のやうな輝きを放つ魅惑的な小品揃ひ。
1. 金の龜を操る女 La meneuse de tortues d'or
2. 小さな白い驢馬 Le petit âne blanc
3. 老乞食 Le vieux mendiant
4. お転婆娘 A giddy girl
5. 哀しき家にて Dans la maison triste
6. 廢宮 Le palais abandonné
7. 机の下で Bojo la mesa
8. 水晶の籠 La cage de cristal
9. 水賣り女 La marchande d'eau fraîche
10. バルキスの行列 Le cortège de Balkis
ジネット・ドワイヤンは全十曲の内から八曲を抜粹し、曲順も次のやうに竝べ變へ奏してゐる。
1. 金の龜を操る女
2. 小さな白い驢馬
3. 老乞食
8. 水晶の籠
9. 水賣り女
4. お転婆娘
5. 哀しき家にて
7. 机の下で
「廢宮」と「バルキスの行列」の二曲が省かれ、曲順迄も改められたのには思ふに理由がある。
(まだ聽きかけ)