上京の供には手頃な文庫本か新書本が欠かせない。昨日たまたま近所のスーパーで買い物をした際に本屋にも立ち寄り、その一郭の古本コーナーをあれこれ物色していて一冊の新書版に吃驚仰天した。
白い背に黒文字で「駅」と大書した下に「ヨーゼフ・ロート 戸板康二 プーシキン」とあるではないか。
ヨーゼフ・ロートは『ラデツキー行進曲』『酔ひどれ聖譚』などで知られるユダヤ系オーストリア作家。小生が密かに好みとするところだ。なのですぐさま反応した次第だが、その名が戸板康二やプーシキンと一線に並ぶのはどうみても尋常ではない。一体全体これはどういう類いの本なのか。
駅
ヨーゼフ・ロート(渡辺健訳)
駅長ファルメライアー
戸板康二
グリーン車の子供
プーシキン(神西清訳)
駅長
百年文庫37
ポプラ社
2010
明らかにこれは小説アンソロジー、それも主題毎に編まれた小さな選集なのであろう。版元のHPに拠れば既に八十冊近くが出され、完結の暁には全百冊になる由。そのうちの「駅」が安価で出ていたのだ。定価の半額以下の三百五十円也。
駅に纏わる短篇はそれこそ星の数ほどある筈だから、三篇のみを選び出すのは至難の業であろう。編者(もしくは編集者)の智慧と腕の見せどころもまさにそこにある。往時の名画座があまたある映画から三本立の番組を個性的に編成するのにちょっと似ている。例えば三鷹オスカー…といっても誰も知らないか。
それにしてもなんとも意表を突いた三本立であることよ。ロート、戸板、プーシキン。時代も国籍も作風もまちまち。前代未聞とはこのことだろう。
(まだ書きかけ)