"BBC Music Magazine" の今月号の附録CD。いよいよ深まりゆく秋の夜更けに聴くべきドビュッシーとラヴェル。
"Debussy & Ravel: Piano Masterpieces"
ラヴェル:
ソナティネ**
フォルラーヌ ~「クープランの墓」*****
亡き王女のためのパヴァーヌ**
ドビュッシー:
ハイドン頌***
ラヴェル:
ハイドンの名に因むメヌエット***
ドビュッシー:
習作帖より**
「忘れられた映像」*
見つかった練習曲****
夜想曲*
ラヴェル:
シャブリエの流儀で****
ドビュッシー:
バラード*
ピアノ/アルトゥール・ピサロ
2005年9月29日*、10月27日**、
2006年1月19日***、2月8日****、3月23日*****、
ロンドン、スミス・スクエア、セント・ジョンズ聖堂(実況)
BBC Music BBC MM324 (2010)
ポルトガルのヴァーサタイルな名手が弾くドビュッシーとラヴェル。2005年から06年にかけてピサロは英京セント・ジョンズ、スミス・スクエアで両者の全ピアノ曲を六夜にわたって取り上げた。本CDはその実況録音の抜粋である。
ラヴェルのよく知られた平明な曲を三つ、ドビュッシーのあまり聴かれない曲を四つ。その間に両者がそれぞれハイドンに捧げたオマージュ曲を併置するという趣向。最後はアンコール風にそれぞれ一曲ずつ。ディスク一枚にバランスよく収まった、いかにもありそうで、なかなかない秀逸なアンソロジーである。
エクセントリックなところはないものの、鋭敏で芳醇なピサロのピアノも申し分ない。
ついでに同じ雑誌の附録からもう一枚。こちらは七年前に出、今や稀覯盤である。
"Debussy & Ravel: Piano Music"
ドビュッシー:
「ピアノのために」
「映像」第一集
「映像」第二集
ラヴェル:
「クープランの墓」
ピアノ/ヴラド・ペルルミュテール
1968年10月7日、1970年3月21日、ロンドン、BBCスタジオ
BBC Music BBC MM230 (2003)
親しく作曲家から個々の楽曲の手解きを受けた
ペルルミュテールは自他共に認めるラヴェル直系のピアニスト。二度にわたり全曲録音も成し遂げている。
そのぶんドビュッシーとはやや距離があったらしく、限られた曲しか録音が残っていない。「
ピアノのために」と「
映像」
第一集とはどうやら十八番だったようで、1972年(日DENON)と1985/86年(英Nimbus)の二種の正規録音がある。「
映像」
第二集に関してはこのBBCの放送録音がCDで聴ける唯一の音源らしい。いずれにせよ、ペルルミュテールの清冽淡麗なドビュッシーが良好なステレオ録音で放送局に纏まって遺されたのは慶賀である。
一驚に値するのは、ドビュッシーとラヴェルとで音色ががらり一変すること。タッチは宝石のように粒だち、端正で均整のとれた音楽がクールに紡がれる。それでいて冷やかさは皆無で、親密さが常に寄り添う。天下一品のラヴェルとはまさにこれだ。