昨晩はなんだか寝つけなくて布団のなかで本を読んでいたら三時前に地震があった。それでますます眠くなくなって今朝は大寝坊。家人はいつの間にか出掛けてしまった。起き出してひとり珈琲を淹れて飲む。外は冷たい雨がそぼ降る。
昨日は家人に急かされて自転車で散歩に出た。なんでも近所のヨット・ハーバーで国体のセーリング競技が行われているのだという。
海岸沿いにずんずん走って行くと、岸に夥しい帆が参集しているのが見える。近づくにつれ、見物人がみるみる増えて祭りの日のような賑わいだ。
道路脇に自転車を留めて砂浜を小走りに岸まで近づくと、透明の帆を掲げたウィンドサーファーが砂浜にずらり並んで待機している。揃いの帆にはめいめい県名が記されていて、大概は海のある県だが、滋賀や長野もある。湖で練習しているのだろう。こんなに大勢のサーファーを見るのは初めてだ。やがて合図とともに一斉に風を受けて沖合を目指す。さながら漁船の船出といった趣。
ただし実際の競技は遙か彼方で行われるので豆粒のよう、高倍率の双眼鏡でもない限り浜辺からは観戦できそうにない。
さらに自転車で岸を進むと、今度は純白の三角帆の集団が屯している。どうやら小型のヨットらしい。家人が近くの関係者に尋ねたところに拠ると、これは一人乗りの「
シーホッパー Sea Hopper」という機種だそうで、風を巧みに捉えて身軽に走るディンギー(dinghy)である由。よく見ると揃いの帆にそれぞれ県名とともに可愛いバッタのマーク(
→これ)が赤く染め抜かれている。文字どおり「海の飛蝗」なのだ。
陽光のもと眩い三角形が海風にはためいて、そこらじゅうで心地よい音を響かせる。スタート前の緊張は不思議に感じられない。やがてここでも合図の声がして、一艘あたり数名の若者がディンギーを水際まで押し出す。移動用のトレーラーを下から引き出すと、白い船体はふわりと水に浮かんだ。乗船するのはすべて若い女性。一斉に「頑張って」の声援が巻き起こる。アーサー・ランサム的瞬間だ。
あれよあれよという間にヨットの群は岸を離れていく。その足の速さはシーホッパーの名にふさわしい。一、二分もしたらもう沖合の彼方に遠ざかった。
そのあとはヨット・ハーバーまで自転車を走らせ、仮設テント内の大型スクリーンで先程のウィンドサーフィン競技を暫く観戦。陸上競技ほど勝敗がくっきり判別できないのでじきに飽きてしまう。
ヨットハーバーには先のシーホッパーより一回り大きいヨットが陸揚げされ屯している。帆をマストにぐるぐる巻きにした状態だ。家人が同郷の茨城県チームに尋ねたところ、これは「
420級 420 class」と呼ばれる二人乗りの船種なのだという。なんでも午前中に予選があったのだが、風が凪いでしまい中断されて「風待ち」を余儀なくされ、今は他種目が済むまで順番待ちなのだとか。待つのも競技のうちなのだ。