こんなディスクもひょっこり出てきた。どこで見つけたのか、もう定かではない。
それにしてもとても一枚のディスクに収まり切れないような大胆で意欲的なレパートリーである。これがわがニッポンで制作されたとは驚きだ。
ディーリアス: ヴァイオリン・ソナタ 第二番(1923)
エネスク: ヴァイオリン・ソナタ 第三番(1926)
林光: ヴァイオリンとピアノのためのラプソディ(1965)
ダッラピッコラ: タルティニアーナ 第二番(1956)
ドヴォジャーク: 四つのロマンティックな小品(1887)
ヴァイオリン/石井啓一郎
ピアノ/石井啓子
1999年5月3~5日、富山、北アルプス文化センター
Exton OVCL-00004 (1999)
どうです、これがもしも一夜のプログラムとして組まれたのだとしたら…ちょっと凄いのではないか。
鍾愛のディーリアスも普段の英国音楽の脈絡でなく、ほぼ同時代のエネスコの楽曲や、互いに異質な林光やダッラピッコラと続けて聴くことで20世紀の時空を旅するような不思議な感慨に襲われる。そもそもディーリアスの許にバルトークとコダーイの連名でファンレターが届き、ドイツでは若きシューリヒトが好んで指揮するような時代があったのだから、このような聴かれ方は示唆的なばかりかむしろ正当でもある。
この石井啓一郎氏は日本フィルに在籍する(した?)ヴァイオリニストなのだそうだが、よくぞここまでヴァーサタイルなディスクを残されたものだ。よほど視野と見識とレパートリーの広い柔軟な奏者なのであろう。演奏の水準も申し分ない。
最後のドヴォジャークで19世紀末に引き戻され些か安堵。では今夜はこれにて。