つい先ほどNHK・TVで観た番組はたいそう示唆に富んだ内容だった。
クローズアップ現代
イラク戦争を問う ~英国・検証の波紋~
出演/アダム・ロバーツ(オックスフォード大学)、等松春夫(防衛大学校)
キャスター/国谷裕子
(口上)
イラク戦争から7年。なぜ戦争に踏み切ったのか。どのような意思決定がなされたのか。戦争に至るプロセスの検証を求める声が日本や世界各地で出始めている。こうしたなかイギリスでは、去年から徹底的な検証が始まっている。独立調査委員会によるこの検証では、これまで機密とされてきた政府の文書が公開され、ブレア元首相をはじめ、意思決定を行った当事者80人以上に対する公開の聞き取り調査が行われ、その様子はテレビやインターネットでも公開されている。 戦争をめぐる意思決定のプロセスを公的に記録し、未来への教訓を読み取ろうというこの検証。背景には、常に戦争と向き合い、そのたびに検証を行ってきたイギリスの歴史と伝統がある。戦争を検証することの意味は何か、そして、イギリスはそこから何を学びとろうとしているのかを探る。
全く知らなかった。英国ではイラク戦争参戦を踏み切った決断の当否を問うための調査委員会が事実関係を詳細に検証中なのだという。そのためにブレアをはじめとする当時の関係者たちが尋問に応じ、検討材料として非公開の機密資料や当時交わされたメールまでが提供されているそうだ。
しかも、これは責任の所在を追求し、要人や関係者を断罪することを目的としていない。ここが肝腎である。そうではなく、すべての情報を公開し検証することで、なぜ確かな情報に基づかず、充分な議論を経ずしてアメリカに追随してしまったのか、いつどの時点でそうした誤った決断がなされたのか、そこに至るプロセスやシステム自体を問い直すのだという。
しかも、その聞き取りの一部始終や得られた情報は即座にインターネットを通じ、全国民に、全世界に向けて公開発信されている。同じ過ちを二度と繰り返さないためにそうするのだという。
人間は過ちを犯す動物である。それを潔く認めるところから出発しようとする英国政治はいかにも大人だと思う。愚かしい過去の誤謬を将来のために生かそうとする。これこそ叡智ではないか。
翻ってわがニッポンはどうなのか。沖縄返還に纏わる密約、基地問題、イラク、アフガン軍事支援でのアメリカ追随は目に余る。しかもあらゆる過去の誤謬が問い直されぬままうやむやに忘れ去られ、「なかったこと」にされる。六十五年前に終わった戦争についてすら、これまで満足な検証がなされていないではないか、とこれは番組で防衛大学校の先生が素直に認めている事実なのだ。