昨夜は珍しく客人たちと夕食を共にし遅くまで談笑した。馴れないこと故ぐったりと草臥れて、いつの間にかそのままホットカーペットで泥のように眠ってしまったようだ。なので今朝は五時半に目が覚めた。体全体がだるい。
朝風呂を浴びて心機一転、天気予報でも観ようかとTVを点けると、耳に馴染んだ歌が流れてきた。プーランク作曲の「
愛の小径 Les Chemins de l'amour」である。どうやら小さな帯番組「名曲アルバム」の一駒であるらしい。
画面はお定まりのエッフェル塔とパリの街並を暫く捉えたのち、一転してプーランクが第二次大戦中に隠棲した郊外の
ノワゼーの旧宅を映し出す。珍しいなあ、初めてその内部を観た。見るからに立派な田舎のお屋敷。彼の実家は有力な化学薬品会社「ローヌ=プーランク社」を営む富裕なブルジョワだったのである。この館で作曲家は占領時代の暗い日々を耐え忍んだ、というようなテロップがそこに被さる。甘美なはずの「愛の小径」が心なしか哀しげに響く。
そのあとキャメラは再びパリの街に戻り、「愛の小径」が初めて唄われたという劇場「
ミショディエール座 Théâtre de la Michodière」を捉える。この小さな小屋でジャン・アヌイの新作『
レオカディア Léocadia』が初演され、
ピエール・フレネー、
イヴォンヌ・プランタンの鴛鴦コンビが共演した。その劇中歌として挿入されていたのがこの「愛の小径」なのである。1940年のことだ。
(まだ書きかけ)